z is for zokkon

50代男性が健康と幸福を追求する日常をつづります

threaten

Google threatens to leave China after attacks on activists' e-mail

という記事がワシントンポストに出ていて、この話題とその後の展開は日本語のニュースでも取り上げられているが、この見出しで用いられている動詞 threaten の用法には、学習者はちょっと戸惑うのではないか。
英和辞典で threaten を引くと、最初に出てくるのはたいてい「…を脅す」という訳語。というわけで、threaten to do も「…すると脅す」という意味になる場合が多い。たとえば They threatened to kill him unless he did as they asked. (言われた通りにしないと殺すぞと脅した;例文はCambridge Advanced Learner's Dictionaryから)など。
しかし、threaten には「〈物・事が〉〈良くないこと〉の徴候がある;…する恐れがある」(この訳語は『ウィズダム英和辞典』第2版の記述を一部改変)という意味もあり、この記事ではその意味、特に後者の「…する恐れがある」の意味にとるのが適切だと思われる。実際、日本語のニュースでも「グーグルが脅しをかけている」といったニュアンスでは報道されていない。

Noughtiesの話

So-netブログがasahi.comからの引用が簡単にできるようになっている(手順としては規約に同意する手続きとか必要になるんでそれほど簡単でもないけど)ので、月曜日(12月28日)の朝日新聞朝刊で見かけた00年代のことを何と呼ぶかという記事についての追加的情報を書いてみた。Wikipediaにも呼び名については若干記述がある。

しかし、この朝日の記事で紹介されている案はどれもしょぼくてびっくりだなー。Zeroesだと動詞zeroの三人称単数現在形と混同される恐れがあるし、Double O's だと売れないアイドル2人組ユニットみたいだし、2Ksだとミレニアムを指すのかと思ってしまうし。アメリカ人も少しは英国メディアにも目を通せばいいのになー。

どうでもいいけど英語のdecadeのことをカタカナ表記するとき「ディケイド」にすることが多いのも不思議。主流の発音は「デケイド」なのに。「ディケイド」と発音することもあるらしいけど。「デ」という表記が英語っぽくなくてダサいのに対して、「ディ」は英語っぽいからいいという意識も働いているのかもしれない。

ネット版 仮面ライダーディケイド オールライダー超(スーパー)スピンオフ [DVD]
石ノ森章太郎
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ググる言語学?

言語学の研究をググってするというのはありなんだろうか?」「論外です」
以上。
古い話題で恐縮ですが。
上の記事に対するブクマには「Googleに頼ったらアルゴリズム変わったときに追試できねーじゃん。科学と呼べないだろ。」という感想をつけたのだが、最近はウェブのあり方も変わってきたので、別の理由も思いついた。

昨晩twitterで書いたことなんだけど、Citigroup plans to pare US stake という新聞の見出しを見て、pareとstakeを共起させるのはどれくらい広く使われているのか、そしてどれくらいくだけた表現なのかと思って pare stake と入れて検索してみたら、検索結果はほとんど同じソースで占められた。配信元の通信社の文章を転載したものがほとんどだったのだ。@fukumimiの助言に基づいて言語を英語に切り替えて検索してみると、日本語版Googleよりはバラエティがあり、インドの新聞が目につくようになったが、やはり同じソースが目立つ。検索業者が最近のニュース記事を重視するアルゴリズムを採用しているのか、ニュースの転載先が増えているのか、その両方なのか、判断材料がないが、英語に関しては検索エンジンを簡易コーパス代わりに使える牧歌的な時代は終わった。その方法はもうほとんど破綻していると言っていいと思う。

英語コーパスと言語教育―データとしてのテクスト
4469213217

fulfillment

週刊東洋経済のアマゾン特集号を見ていて、アマゾンの物流センターの名称に目がとまった。フルフィルメントセンターというのがある。たしかHMVのネット通販部門でもこういう名称の部署があるのを思い出した。同誌では「フルフィルメント(物流)センター」という書き方がしてあった。

週刊 東洋経済 2009年 8/29号 [雑誌]
B002KI6I56

fulfillmentという語の訳として、これに相当する日本語を挙げている英和辞典は僕の見た範囲ではなかったが、英辞郎は語義3に

フルフィルメント◆【参考】e-commerce fulfillment◆商品の受注から入金管理に至るまでの一連の作業を行うこと。

と示している。

「物流」という訳語をあてた英単語については、以前この日記でも触れたことがある(d:id:zokkon:20070125)が、fulfillmentに対しても経済誌が「物流」をあてているということは、日本語の「物流」の指す範囲そのものが広がってきているということなのだろう。

英英辞典で見てみると、Longman Business English Dictionary にはこの意味での語義は載っていないが、houseの項に分離複合語として出ている fulfillment house が近い。

fulfillment house
AmE MANUFACTURING a company that provides a service for a manufacturer before goods are delivered to customers, for example labelling or packaging: The fulfillment house hired by Kraft to handle the promotion accidentally mailed some out-of-date coupons.

Longman Business Dictionary (Longman Business English Dictionary)
1405851384

再び英和辞典に目を転じて、専門辞典である『総合ビジネス英和辞典』(研究社)を見ると、fulfillmentの語義2で

(サービス業者などが)利用者の依頼に応じること, 注文処理

というのがある。このあたりから出てきた用法なのかな。
研究社 総合ビジネス英和辞典
研究社辞書編集部
4767434602

Jazz Me Blues

WordPress 2.8 がリリースされた。公式ブログでの告知記事のタイトルが2.8 Release Jazzes Themes and Widgetsとなっているのは、このヴァージョンのニックネームがチェット・ベイカー Chet Baker からとった Baker であることにちなむものだと思う。releaseが名詞でjazzが動詞だというのが高校生には難しいかも。jazzは動詞としては「にぎやかにする」とか「活気づける」ぐらいの意味で、それっぽく訳せば「テーマとウィジェットがより多彩になった2.8」といった感じになるだろうか。
それにしても、典型的な破滅型の無頼派ジャンキー、チェットにちなんだのはなぜだろう。どうせなら Jazz Me Blues という映画の主人公にもなったビックス・バイダーベック Bix Beiderbecke のほうがよかったんじゃない? 同じことか。
IN A MIST
BIX BEIDERBECKE
B000PFU7XK
Let'S Get Lost
Chet Baker
B000025SUE

Posterous始めました

新しいウェブサービスの名称って、うならされることが多い。この前始めたPosterousというのは、一種のtumblelogで、マルチメディアファイルをメールの投稿でアップロードさせてくれる。日本の現状にすごく合ったサービスだと思うけど、全然メジャーになる気配もない。惜しい。
この手のサービスの名称は、Posterousのような造語か、flickrのように既存の英単語の綴りの一部を改変したものが多いと思う。twitterみたいに既にある英単語をそのまま使うパターンは珍しいように思う。だからここまで普及したのかな。

語強勢の問題

2009年のセンター試験――発音問題で、第一強勢ではないところが問われている?で、

「下線部の発音が異なるものを選べ」の作問って、強勢があるかないかが一番重要なんじゃなかったでしたっけ。

と書かれているけど、ちょっと違うんじゃないかな。forgiveのforやfortuneのtuneに下線を引いて問題にしてはいけないということのようだけど、強勢のない音節は音そのものが一意に決まらないから、その箇所の音を問う設問は成立しないということだと僕は考えている。「下線部は必ず強勢のある音節に引くべし」というルールがあってもいい(超良心的だ)けど、そうじゃなければならないということはないんじゃないかな。例えば、forgive, fortune, formal, format のforのところに下線を引いて、「下線部の発音が異なるものを選べ」という問題は成立すると思うし、別に責められるようなものではないと思う。forgiveのforの音を問うことは意味がないけど、ほかの同じ綴りを持つ(かつ発音が異なる)語との対比なら可能だろう。実質的に「発音」じゃなくて「強勢」を問うものになっているじゃないか、という批判は当然ありうると思うけど、強勢も発音の大きな要素の一つであってこの種の問題の射程に含まれると考えてもそんなに不都合はないと思う。この辺りは識者の意見をうかがいたいところだ。
それより、newbornのほうに抵抗を感じる。このbornは基本的に第2強勢があるものと解するべきなので、強勢が1か所しかないほかの選択肢と異なる。英和辞典には、複合語・分離複合語に複数の第1強勢が存在することを認めるタイプと認めないタイプがあり、後者のタイプだと後ろの要素は基本的に第2強勢がくることになる(ただし複合語・分離複合語で後ろに第1強勢がくるタイプのもあるので油断はできない)。newbornは主に限定用法で使われる形容詞だからなおさら前のほうのアクセントが強くなると思う。第1強勢と第2強勢の区別をすることなく、強勢の有無だけを問題にしているわけなのでOKという考えに立っているのだろうけど。
英語の発音のルールについてはずいぶん前に買った川越いつえ『英語の音声を科学する』(大修館書店)を読み直してみないと。持っているのは初版なんだよね。最新版は第2版だと思うけど「新装版」という表記になっている。どう変わったのかな。
英語の音声を科学する
川越 いつえ
4469245313
Longman Pronunciation Dictionary も去年改訂されて第3版が出ている。うかつにも知らなかった。CD-ROMがついて実際に発音が確認できるので、IPAが読めない人も便利に使えると思う。
Longman Pronunciation Dictionary
J. C. Wells
1405881186