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混乱する訳語

翻訳するときの鉄則の1つに,専門用語に限らず定訳があるものは定訳を用いる,というのがあると思うのだが,定訳が定まっていなかったり,誤訳としか思えない定訳というのもあったりする。

誤訳の例としては,post-impressionism に対する「後期印象派後期印象主義〕」があるだろう。post-impressionism は印象派の外側に位置しているのだから,「後期」という語を用いると印象派に属しているようで誤解を与える。ということを自分も感想として持っていたし,新聞記事でもそういう主張を読んだことがあるが,実はこれ中国語の語法の影響を受けているんじゃないだろうか。つい先日『Hero 英雄』を見たのだが,そこのエンドタイトルで中国語と英語の両方の字幕が出ていて,post production のことを「後期製作」と訳していた。ということは,中国語の「後期」は後ろの語の範疇に属さないということなのでは?つまり日本語的には誤用であっても,中国語としては正用法だった,のかもしれない。

もう1つ,定訳自体は正しいのに,世間には間違った語がかなり広まっている例もある。Spanish Civil War「スペイン市民戦争」がその1つ。そもそも「市民戦争」なんていう語はないと思うのだが,『スペイン市民戦争』というタイトルの訳書もあるわけで,なかなかなくならないんだろうな。
ぐぐると,正しい用語のほうが使用例が多くて一安心。

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