『変化する英語』

『変化する英語』ISBN:4894761882(中尾俊夫,ひつじ書房)

文法とか語彙とか発音とか,英語はいろいろ変化している。その実態を,現代の大衆文学における実例や各種資料とともに広範な項目にわたって挙げていった本。これからの変化の方向性についても,最終章で予想している。
手書きメモをもとにまとめた遺稿集という性格から,考察や統計資料による検証が含まれる項目というのはそんなにないので,詳細な検証は後進の研究にゆだねられたものだと言えるだろうか。
前に関心を持った「名詞の形容詞化」とか,文外に先行詞を持つ関係代名詞といった項目も挙げられていてちょっとうれしかった。

変化が認められる項目に関しては,いつからその変化が生じたのか,どの時点でどれくらい受容されていたのか,といった記述がある場合もある(ない場合もあるが)ので,なかなか刺激されるところが多い。
自分の無知をただされた項目としては,比較の構文での not as ... as 構文が認められたのは比較的最近で,「1969年の数字によると賛成43%」(p.33)だとのこと。正式には not so ... as となるわけだが,今は中学校で not as ... as の形しか教えていないと思う。ところで,この「数字」の典拠が何であるのか示されていないのはやむを得ない事情によるのだろうけれどもやっぱり不満。
また,if を whether と同じ意味で用いるのも新しい用法で,「19cから最初 be 動詞の後位置で」(p.55)の使用が発端なのだという。そして,I don't know if it is right. という文は「1945年ごろAEですでに確立」という新しさなのだそうだ。これも中学校段階で教えている言い方であり,「新しい言い方」にも受容度に差があるのが興味深い。
あと,仮定法の if I were you という言い方について,『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)には「定型的な言い方としてこの場合は if I was you より普通」といった記述があったと思うが,p.67 には「BE[British English]でも if I were you より if I was you の方が自然である」としている。これはもう一段の計量的な検証が必要だろうと思う。