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「『ジーニアス和英辞典』叩き」の深層(というほどでもない)

電子辞書掲示板 http://6627.teacup.com/sekky/bbs で主宰者のSekky こと関山健治先生が,10月22日(水)20時21分06秒の投稿で次のようなことを書いている。

G和英の批判は,専門家の間では刊行時からよくされていましたが,一般の学習者の方が言うようになったのはここ数年だと思います。不思議なことです。

不思議なことかな? 好意的に解釈すれば,1997年末の刊行から数年たって,使い込んだ人の感想が現れる頃だという見方もできそうだ。
専門家の評価として,「刊行時」に発表されたものではないが山岸勝榮先生の「ハイブリッド方式和英辞典に関する諸問題」http://jiten.cside3.jp/efl_dictionaries/efl_dictionaries_17.htm が代表的なものと言える。
ぼく自身もこの尻馬に乗って「ジーニアス和英はよくない」という言葉を垂れ流したことがあるので反省している。まあ実際「使えない」と思ったのは確かだが,この辞典の作り方は,発想としては間違ってないと思っている。和英辞典では必要な語法情報が得にくいから,使用者が英和辞典を引きなおすことが多い,それならいっそ英和の記述を最初から示せばいい,という考え方。そのもとになる英和が,一義的には読解向けの『ジーニアス英和』なので発信用の和英辞典には今ひとつ調和していなかったということだ。シソーラス類義語辞典〕の(英和・和英という枠にとらわれない)学習用辞典への統合という可能性を見せたことも特筆すべきことだったと思う。

ここへきて『ジーニアス和英』ISBN:4469041505 叩きが目立ってきた理由として,電子辞書への標準搭載辞書になってきたことが挙げられると思う。これは関山先生も別のところで書いていた。わざわざ和英辞典を買おうという層は少なかったのが,現在では電子辞書を買えばそこに和英がついてきて,しかもそれが単に英和をひっくり返しただけのG和英だったため,「こんなの使えない」という感想が広く共有されている可能性はある。

それに加えて,Gに限らず「和英辞典を使ってはいけない」という説をまことしやかに触れ回る人々がいることも関連しているかもしれない。

先の引用部分に続けて,関山先生はこう書く。

私がこう言うのも何ですが,最近では,とくに個別の辞書の善し悪しに関する評価は,いわゆる先行発言の受け売りというか,「耳学問」によるものが増えているような気がします。自分で使っていてこういうところが使いにくい,と感じた評価ならいいのですが,明らかに他の人の受け売りであるものが非常に多く見られます(見る人が見れば分かると思いますが)。

結局そういうことで,2chあたりで他人の受け売りをしてまわる輩が多いことだけが問題の本質なのかな。一次情報の発信者が少なくなったという話を最近どこかで読んだ。意識的であれ無意識的であれ,二次情報を中継する人は増えているはずで,相対的に一次情報が少なくなるのも仕方がないだろう。