z is for zokkon

50代男性が健康と幸福を追求する日常をつづります

川上弘美

『神様』(中公文庫)ISBN:4122039053
川上弘美の作品は初めて読んだけど,なかなかいいなあ。「くまにさそわれて散歩に出る」という書き出しでやられた人がたくさんいるようだが,村上春樹なんかにもそういう感じで進んでいく作品が結構あるよね。
中では「離さない」が一番気に入った。人魚が出てくる短編ということでチャールズ・ブコウスキーの「人魚との交尾」(いや,これには人魚は出てこないんだった)にも共通する味わい。主人公というか一人称でしゃべってるのは女性。画家で教師のエノモトさんという人が人魚を連れて帰ってくる。人魚が出てきて,このタイトルならこういう展開,と予想はできるんだけど,軽く上回ってしまうのだった。

よく晴れてるし、このまま散歩して帰ろう。人魚も一緒に。甘い声だった。自分の声ではないみたいだった。いけない、こんな声を出してはいけない、と思ったが、やめられない。