最近読んだ本

辻邦生『外国文学の愉しみ』ISBN:4476012299第三文明社 レグルス文庫)
全集の月報とか,新聞記事の形で発表した文章を集めたもの。こんな版元からも出しているのは驚きだった。2年ぐらい前に八重洲ブックセンターで発見して購入したもの。1998年7月の発行。同じ日に,同じ著者によるやはりレグルス文庫の『地中海幻想の旅から』も買ったのだが,このシリーズには著作目録がついているのがありがたい。そのうち Wiki に転載しようと思う。[追記:自サイトの wiki にてぼちぼち作成中。]
さて,『外国文学〜』のほうは,『思想』に発表した「ゲーテにおけるよろこびと日々」などに辻氏の考え方がよく現れていると思う。

18世紀には,何か価値ある仕事をして,それではじめて生きることが意味づけられる,というようなことはありませんでした。つまり19世紀以降に見られたように,外在化する無意味な日常生活のなかから,価値的な内在化された領域(本質領域)を切りぬき,そこに生きることではじめて意味充足を味わい,幸福を感じるという生き方は,まだ生まれていなかったのです。生きることがそのことだけで充実していましたし,狩やダンスや芝居や社交や学問で,生きる時間を充実させようと情熱を燃やしていたのです。ル・ナン兄弟の絵を見れば,労働する農民たちまで生を喜ぶすべを知っていたことが分ります。18世紀はまだ「仕事」などという生活を支配する意識が一般化せず,生活そのものを素材にして,それを美しく磨きあげ洗練させていった時代だということができます。
(p.74 原文は縦書きでカンマではなく読点を使用,数字も漢数字)

このあたりの認識については,吉田健一なども似たようなことを書いていたように記憶している。18世紀がどうだったかというよりも,その精神をだれがどのように受け継いでいるかといった点が重要。
でもここで取り上げられている人たち(ディケンズゲーテトーマス・マンバルザックプルースト)の作品をろくに読んだことがないなあ。こういうのは20代前半までに読んでおくべきだったのかな。