新幹線がなかったら

新幹線がなかったら (朝日文庫)

新幹線がなかったら (朝日文庫)

先日読んだ『定刻発車』と一緒に購入したもの。著者はJR東日本の会長を務め,現在はJAXA宇宙航空研究開発機構)理事長。
新幹線を日常的に利用している者として,知っておいてよかった話がいろいろあった。新幹線のコンセプトは画期的なものだったが,技術としては実は「枯れた」技術(本文中ではそういう表現はしていなかった。英語では sound engineering と表現していた)の集大成であるというのがすごい。しかもあのタイミングでなければ実現していなかっただろうし,新幹線が成功したからこそ日本のその後の経済発展もあったし,世界的な鉄道の技術革新の発火点にもなった。
昔から不思議に思っていたのは,「ビュワーン ビュワーン はしる」で始まる歌には「時速250キロ」と歌われているのに,実際にはそんなに出ていないのはなぜだろうということだった(今はのぞみがもっと速く走っているが)。もともと250キロで計画されていたらしいが,建設にあたって世界銀行からの融資を受けるには,復興という名目が必要なのに,新しいことに挑戦して250キロも出してしまっては目的に反することから,200キロという上限を設けたらしい。
ちょっと気になるのは,「事故は事故を呼ぶ」という格言,それから東海道新幹線は開業以来40数年にわたって大きな事故を出していない(ただし死亡事故がなかったわけではない)が,これだけの年月運用してきているということは日々未知の領域に切り込み続けているわけで,この先何が起こってもおかしくないということ。そういえば,本書の親本は1998年の発行だが,その頃に山陽新幹線で窓ガラスが割れるとかいった事故があったと記憶している。もうちょっとあとだったかな。今度はいつどういう形で危機が現れるか予想もできないが,危機が現実のものになったときに「スローライフに戻れ」なんていうような思考停止をわめき散らすようなバカにはならないように肝に銘じておこう。
そういえば,本文中で一般的には「小型」「新型」と表記するところを「小形」「新形」と一貫して表記していたのが目についた。これ鉄道関係の用字法なんだろうか。