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もう限界です

学習英和辞典の marginal の定義にはおかしいものが多いような気がする。とくに経済分野で「限界〜」と訳される連語にかかわる部分。
そもそも「限界」という概念自体が,これらの辞典の主なターゲットである高校生(というか大学受験生)にはなじみのないものである可能性があるので,そんな正確な概念の解説は必要じゃないかもしれないが,「収支とんとんの」なんて別の意味と一緒くたにされているのはさすがにどうかと思う。
上級向け学習辞典の記述を比べてみる。

(ジーニアス英和辞典第3版:大修館書店)4〔経済〕限界収益点の, 収支とんとんの‖〜 profits [costs, revenue] 限界収益[原価, 収入].
※この記述は『ジーニアス英和大辞典』でも同じ。

ウィズダム英和辞典:三省堂)4〔経〕[通例名詞の前で]限界収益点の, やっと採算が取れる‖marginal cost 限界費用(生産量をわずかに増やすことによって生じる増加分)/ marginal tax rate 限界税率(所得の増加分に対する課税率)/ marginal revenue(限界収入).

(レクシス英和辞典:旺文社)2 最低限(度)の,限界(ぎりぎり)の, 不十分な;〔経〕(利潤を生じるかどうか)限界の, 限界収益(点)の;〔農〕耕作[地力]が限界の‖His grades are 〜. 彼の成績は及落すれすれだ/ 〜 standards of living 最低限度の生活水準/ 〜 profit(s) [farmland] 限界利潤[耕地].

そもそも「限界収益点」というのを知らないんで(あはは)自信がないんだけど,「入力1単位の増分に対応する出力の増分」みたいな意味になる訳語が現れないままに,その意味に対応した用例が急に出てくるのがおかしいように思う。

あと研究社の『ルミナス英和辞典』と東京書籍の『アドバンスト・フェイバリット英和辞典』も見てみたいけど,今手許にないので割愛。

一方,ロングマン現代英英辞典ではこんな感じ。概念まで翻訳する必要がないからシンプルだ。

2 [technical] relating to a change in cost, value etc when one more thing is produced, one more dollar is earned etc

また,専門辞書『プロフェッショナル英和辞典 SPED VEGA』ISBN:4095067217な説明がある。marginal 自体には「限界収益点の;限界採算商品の」といった訳語が載っているだけでとくに詳しい説明はないが,連語を見出しとして立ててある。

marginal cost (1) 【経済】限界費用[生産費][追加的な1単位の生産に必要とされる総費用の増加分](2)【会計】限界原価,限界費用[生産高が一単位増加または減少することによってもたらされる総原価の増減額]

しかし,なぜ1番目の語義と2番目で「一単位」の表記が異なっているのかが謎。このあとの項目でも混在。なぜ!? 気になる。