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エボニクスの英語

エボニクスの英語 アフリカン・アメリカのスラング表現

エボニクスの英語 アフリカン・アメリカのスラング表現

ブラックミュージックの権威ともいえる泉山真奈美さんの新刊。アルクの雑誌連載を、研究社の金子靖さんが編集したもの。
エボニクス(Ebonics)とは「黒人英語」のことなので、タイトルのうち「の英語」は冗語的だが、「エボニクス」だけじゃ一般読者になじみがなさすぎるので、あえて加えたのだと思う。妥当な判断だろう。
今ではエボニクスがメインストリームの英語に影響を与えることも多いので、黒人音楽のファンだけじゃなくて、英語を勉強する人に広く読まれるべきだと思う。泉山さんの個人的な経験にもかなり紙幅が割かれていて、さすがだなあと思う部分も多い。とくに、卒論に「カラーパープル」を取り上げたあたりの事情についてはぐっとくる。

ただ、間違いというか怪しい記述もけっこう散見される。もとがアルクだけにそのあたりはしょうがないのかな。現代の二重否定(I can't get no satisfaction とか Ain't no mountain high enough とか)が黒人英語からの影響だととれる記述になっているが、英語にもともとあった語法で、それが死なずに残っているもの。黒人英語だけの特徴というわけでもない。18世紀以前の(白人の話す)標準英語も、否定辞がいくつあっても否定の意味になる言語だった。

また、「付帯状況を表す動詞」なんて表現が複数箇所に現れるが、学校英語的には「状態を表す動詞」という言い方をしているはず(「付帯状況を表す動詞」という概念があるのかどうかは未確認)。

あと、二子玉川園に「ふたごたまがわえん」とルビをふっているのは、いくら著者が東京都民ではないとはいえ、いただけない。「ふたこ」でしょ。

もう一つ気になった点は、「P-funk は Pure Funk のこと」なのだそうだ。これは正しいのかなあ。現時点で裏付けはとれないけど、P は Parliament のことだと思っていた。

結局、悲しい性で文句の方を多く並べ立ててしまったが、冒頭にも書いたように、多くの人に手にとってほしい。コアなラップの表現とかがたくさん出てくるような本じゃないし、だれでも楽しめる。モータウンでもかけながら読むといいと思う。