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ビートルズ全曲解説

これがビートルズだ (講談社現代新書)

これがビートルズだ (講談社現代新書)

中山康樹氏の文章って,けっこう決めつけが多くて小気味いい。好き嫌いは分かれそうだ。平岡正明に似てる。
アルバムごとに章を区切り,1曲1ページをあてて解説したもの。オリジナルアルバム+パスト・マスターズ Vol. 1 & 2 で計15章になる。これでビートルズが公式発表した楽曲は213曲すべてをカバーしたことになる。
2年前に出たこの本をわざわざ購入しようと思ったきっかけは,中山氏がビートルズ観として「初期にジョンの才能が爆発したが徐々に下降線をたどり,それと入れ替わるようにポールが大きく伸びてきて,音楽的リーダーシップの交代が起こった」ということを表明しているというのを伝え聞いて,大いに共感したため。
この本によるとジョンの最高潮は A Hard Day's Night であって,その後はゆるやかに下降していき,Strawberry Fields Forever を最後に,(あくまでもビートルズという高い基準をあてはめると)名曲と呼べるものは出していない。そうかも。
あと興味深いのは個々のアルバムに対する評価。特に,近年評価の逆転が起こっている Revolver と Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band については,そうした趨勢に真っ向から異を唱えているのがおもしろい。リボルバーのほうは,「サイケデリック・アルバムとして評価する人が多いようだが全然サイケデリックではない」し,曲はそんなによくない,むしろ忘れられている感のある Rain 1曲のほうがアルバム全体よりすごい,としている(うーんそうかなあ。Rain は確かにいいけど,それを忘れたためのリボルバー再評価ではなくて,それ込みでのリボルバー再評価だと思うけどなあ)。そして,サージェント・ペパーズのほうは,「ビートルズの最高傑作ではないがあの時代の最高傑作である」という評価。ぼく自身は,前にも書いたと思うけどサージェント・ペパーズの収録曲にはそんなに魅力を感じてなくて,A面B面それぞれ最後の曲 Being for the Benefit of Mr. Kite と A Day in the Life ぐらいしか好きじゃないので,あとの曲は長いイントロみたいな気がしてしまう。実際中山氏が書いてることもそんなに違わないのだが,なぜかアルバムとしては高評価なのだ。
まあでも,ジョージのインドとジョンの後妻はとにかく余計だったという見解に対して反論したい人はあまりいないだろうな。
ほかにもおもしろい文章が目白押し。中山氏によると,ビートルズをこれから聴く人はパスト・マスターズ Vol. 2 を最初に聴いて,それから Vol. 1,そのあとでオリジナル・アルバムを聴くとよいとのこと。

[追記]yasusii さんから,上の文中に登場するババアについて貴重な情報をいただいたので,手動トラックバック(ん,違う?)しておきます。まあ当時はまだババアじゃないけど。
http://lowlife.jp/yasusii/weblog/2005/06/05.html#P649