Sの項1

これからしばらく、今までとは趣向を変えて驚異の百科事典男 世界一頭のいい人間になる!のひそみにならい、辞書を読んでいく企画をやってみようと思っています。文体も変えます。急にですます調。
読む辞書は、コーパスをもとに編集された上級学習用英和辞典、三省堂の『ウィズダム英和辞典』を中心に、適宜ほかの辞書も参照する形をとりたいと思います。コーパス中心なので、今の英語の世界の様相を反映していますし、学習辞典ですから用法なども詳しいはずです。

ウィズダム英和辞典

ウィズダム英和辞典

そして、読んでいくにあたってテーマを決めておきます。漫然と読んでいては飽きるし、身につきませんから。というわけで、ちゃんとした辞書を初めて買ってもらった中学生の頃の気持ちに帰って、辞書から性的な妄想をかき立てる記述を探していこうと思います。タイトルの横にある dtms というのは「童貞妄想」の頭文字をとったものです。まあ結局そのことしか頭に残らない危険もあるわけですが、そこで覚えたものを手がかりに、芋づる式に語彙を広げていこうという試みなのです。
経験上、辞書を通読すると必ずAの途中で挫折するわけですが、それを避けるために、あえて途中から、それも一番項目数が多いと思われるSから始めてみます。Sならsexに到達するのも早いし。

sacrifice

「犠牲」という意味です。名詞のほかに動詞の用法もあります。それだけだと別になんということもありませんが、成句に make the final [supreme, ultimate] sacrifice というのがあります。文語で「(大義・思想のために)一命を捧げる」という意味で多くの辞典に載っていますが、『ウィズダム』は「2 女性がしぶしぶ体を許す」という意味を載せています。どういう状況なんでしょうか。今だと、石田ゆり子が映画『愛の流刑地』に出演させられてしまうことを想像するのがタイムリーかと思います。

sadism

学習英和辞典はほとんどが単語を重要度でランク分けしています。上の sacrifice はBランクですね。sadism はEランクで、関連する語もいろいろあります。sadist, sadistic, sadomasochism といった感じです。どれもEランクなので別に覚える必要はありません。ちょっと気にしておきたいのは、sadomasochism の -ch- は /k/ の発音になるということぐらいです。

safe

Aランク語です。辞書じゃなくて単語集なら、「安全な」という形容詞、それから「金庫」という意味の名詞の2つが載るぐらいだと思います。DT的には、safe period という熟語(この辞書では「分離複合語」という用語を使っています。2語以上の組み合わせで1つの単語、多くは名詞のように使われる語句のことです)が気になりますね。「(まず妊娠することのない)安全期間」という意味です。
それから同じく分離複合語に safe sex というのもあります。「安全な性行為」という意味が示されていて、注記として「コンドームなどでHIV・性病の感染を防ぐ」とあります。先ほどの safe は「妊娠しない」という意味での「安全な」でしたが、こちらは「病気にならない」という意味の「安全な」のようです。これについては、もしかしたら両方を意味するのかもしれないなと思ってちょっと迷ったので、ほかの英和辞典も少し調べてみました。三省堂の一般向け辞書『コンサイス英和辞典』には「コンドームなどを使用」としか書いていません。小学館の『プログレッシブ英和辞典 第4版』ISBN:4095102047(これは一般向けながら、学習向けの要素も大幅に取り入れた画期的な辞書として好評でした。初版は1980年で、2003年1月発行の第4版は最新版です)には「エイズなどの性行為感染症を防ぐための(コンドームなど)予防策を使ったセックス」という注記があります。これでだいたい明確になりました。
なお、辞書の特徴として、コンサイスとプログレッシブは safe sex を独立の見出しとして示していますが、ウィズダムでは safe という項目内の分離複合語扱いにしている点が目につきました。どちらが引きやすいかは一概には言えませんが、分離複合語のところにありそうなのになかったら、独立見出しも見た方がいいということになりますね。

safety

Bランクです。上記の safe の派生語で「安全」という意味です。米語のくだけた用法では「コンドーム」を意味するようです。まあ当然ですね。分離複合語に safety valve というのがあって、「安全弁」という意味だと思うでしょ。それはそうなんですが、『ウィズダム』では、これのほかに「(感情・欲望などの)はけ口」という意味も載せているばかりか、こっちの方を先に示しているんですね。コーパスではこっちの方が使われる場面が多かったのでしょうか。興味深いです。

sa- その他

ほかに salacious(好色の; わいせつな[人, ことば, 絵画など])とかその関連語が載っているわけですが、Eランクで用例が載っているわけでもないので、あんまり妄想は浮かびませんね。
しかしこんな調子では読み終わるのにどれくらい時間がかかるのでしょう。