『レクシス英和辞典』(旺文社)を見ていたら,LISPという項目があったので驚いた。『アドバンストフェイバリット英和辞典』(東京書籍),『ルミナス英和辞典』(研究社)にもある。
古い言語である COBOL, FORTRAN はたいていの学習辞書に(『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)にさえ)載っている。
ほかにポピュラーな言語では,Java もたいてい載っている。『レクシス』は「Sun Microsystems社の開発したマルチOSに対応したオブジェクト指向のプログラミング言語」という注記をつけてある。これ書いた人は絶対中身を理解してないだろ。Sun Microsystems社がマルチOSというのを開発したみたいに読めてしまう。「どんなOSにも対応できる」という謳い文句を参考にした記述なんだろうけど,名詞的表現を動詞的に訳さないとわかりづらくなってしまうことの実例の一つと言えるだろう。『アドバンストフェイバリット』も「米国製のプログラム言語」と失笑ものの注記。ほかの言語にはいちいちどこの国で生まれたかなんて書いてないだろうに。「Sun Microsystems社が開発した」と書きたくないなら,この辺はまるごと削っちゃえばよかったのにね。
一方,英英辞典ではどうかというと,Macmillan English Dictionary の Java という項目は,「ジャワ島」という意味にはまったく触れていなくて,プログラミング言語の意味しか載せてないのが新鮮(コーヒーの銘柄としての小文字の java という項目はある)。英国系の辞書の伝統ともいえる,固有名詞に関する記述はできるだけ抑えるという方針に沿ったものか。でも中身は変だ。
a computer programming language that allows computer software to be used on any kind of computer and allows all computers to communicate with each other, for example through the Internet:
Java script
これだとまるで通信プロトコルのようだ。それに用例も Java script というのを載せているけど,これで間違いじゃないとしても javascript との混同を誘発しそうなミスリーディングなもの。
一方で,フリーソフトウェア/オープンソースの言語はあまり掲載されていない。たとえば,このクラスの学習辞典で Perl を項目として立てている辞書は見当たらない。Python なんかだと下のほうの語義に紛れ込ませることはできると思うけど。
ほかには,Logo を載せている辞書が多いことも目立つ。これは,logo という一般名詞があるから,それとの区別が必要ということで載せているのだろうか。『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)にも載っている。では Python や Scheme も載せるべきじゃないか,ということになるのだが,まあ高校生向けの辞書の守備範囲を超えていることは間違いないだろう。
それを言い出せば,プログラミング言語全般がすでに高校生向けの学習辞書で扱うべき範囲外とも言える。それなのになぜそういった領域をカバーしている辞書があるのかというと,説明しだすと長くなるので稿を改めることとしたい。
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provostの件、さらに書き直しておきます。
名著であったが
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