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ジーニアスのへぼい用例

 一昨日の例のほかに,ジーニアスの第4版で修正がなされているものの不十分な箇所がある。これは誤りとはいえないが,読者に対しては不親切であり,辞書の記述としては改めるべき箇所ではないかと個人的に感じる部分。
 comprise の項,他動詞の語義1と2に,それぞれ次のような用例が示されている(引用の中では訳を省いた)。

Great Britain 〜s England, Scotland, Northern Ireland and Wales. (=Great Britain is composed of England, Scotland, Northern Ireland and Wales.)
England, Scotland, Northern Ireland and Wales 〜 Great Britain.

語義1と2で,意味的に等価な用例を示しているわけである。さらに compose を用いた言い換えも示していることにも注目。こういう言い換えは授業で教師がよくやる行動の一つではないか。言葉の意味や文法事項を図式的に説明するには都合がよい。そして,そういった授業で取り入れやすい記述を大幅に取り入れたことで,ジーニアスは教師から絶大な支持を受けてきた。でも,2番目の例文のような英文に出合うことはどれだけあるだろう。実際の文章では,語義2の用法の場合,このようにいくつかの名詞を列挙したものを主語にするパターンよりも,複数名詞を主語にする文に出合うことのほうがはるかに多いはず。

In Britain women comprise 40 per cent of the total work force. イギリスでは女性が全労働力人口の40パーセントを占める (『ウィズダム英和辞典第2版』)
Today, centenarians comprise the fastest-growing segment of the population. (THE LOS ANGELES TIMES; December 25, 2006)

 ジーニアスに載っているような例文は,教室では役に立つかもしれないけれども,現代英語の実際の姿を反映してはいない。
 ところで,この記述は前の第3版から基本的に変わっていないが,さりげない修正は行なわれている。それは,Northern Ireland をUKの構成要素に入れたこと。どこかから指摘があったのだろう。これで事実関係としては正しくなったわけだけど,例文はいっそう長くなって見にくくなった。どうせ直すなら,もっと本質的なところを修正すべきだったろう。