3冊読書

「本は三冊で読む」と松岡正剛氏が提唱して、それに基づいた商品展開をした書店があったという記事が数年前に新聞などに出たことがある。僕もそれに倣って3冊セットで本を紹介するブログ記事を書いたうっすらとした記憶があるが、いつどこで書いたのかもはや憶えていない。そしてそのときも自分では全然3冊でなんか読んでいなかったと思う。
何のきっかけかは忘れてしまったが、不意にそのことを思い出したので、先週ちょっと実践してみた。選んだのは80年代ぐらいまでの近過去の文化を振り返る3冊。永江朗『セゾン文化は何を夢みた』(2010 朝日新聞出版)、村松伸東京大学生産技術研究所村松研究室『シブヤ遺産』(2010 バジリコ)、『田中一光自伝 われらデザインの時代』(2004 白水Uブックス)という顔ぶれ。

セゾン文化は何を夢みた
永江 朗
4022505389

シブヤ遺産
村松 伸 東京大学生産技術研究所村松研究室
4862381626

田中一光自伝 われらデザインの時代
田中 一光
4560073708

『セゾン文化〜』は堤清二にインタビューしている部分が読み応えあった。セゾングループが崩壊したのは、元共産党員のお大尽が文化事業にうつつを抜かしたのが原因だという俗説は当然明快に否定されていたが、負債に頼った経営がバブル崩壊の影響をもろに食らっただけだったのなら、セゾン美術館などが「役割を終えていた」という総括は何か違和感が残る。そうは言ってほしくなかったというか。

デザイナーの田中一光西武百貨店の包装紙からセゾン美術館のアートディレクションまでかかわり(包装紙は一度コンペで没になっていたのに手違い的な経緯で結局採用されることになったらしい)、セゾングループとのつながりつながりが深い。そのあたりの経緯も自伝ではさらりと触れられている。

『シブヤ遺産』で扱われているのはもちろん西武だけじゃなくて東急の施設も含まれるし射程に入っている年代も地域も幅広いのだが、いま振り返ってみると池袋の西武周辺で体験したことと渋谷の東急百貨店周辺(文化村とか)で体験したことのイメージがわりと融合していることに気づく。自分は要するに上っ面しか見てなかったんだな、というのがよくわかって物悲しい気持ちになる。