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流離譚

book

安岡章太郎『流離譚』(上・下)は、講談社文芸文庫から出ていたが、一度書店で見かけたのに荷物が重かったので買わないでいたら、いつのまにかカタログから消えていた。先日図書館に行ったときに発見したので借りてきて、今日読み終えて返却。
亡父の蔵書の中に安岡章太郎の著作はいくつかあって、『放屁抄』とかおもしろい題名なので小さい頃から印象に残っていた。『流離譚』もあったはずだが、結局僕は1冊も読まないうちに父は蔵書を処分していた。
『流離譚』は土佐の郷士、安岡家の幕末から明治にかけての人々の事績を資料から丹念にたどった作品。小説の範疇に入るのだろうが、フィクションというわけでもなく、歴史の一つの解釈といったほうが適当だろう。森鴎外の史伝の方法論を批判的に再構成して自分のルーツに対して実践したものだろうか。資料を解釈していく際の根拠として著者の直観なども含まれるわけだが、どれも非常に説得力があった。
東京エゴイストというウェブサイトでこの本について触れられているように、昨年のNHK大河ドラマ龍馬伝」とは時代も舞台も重なる部分が多く、格好の副読本になったと思う。復刊して関連書籍として売ればよかったのに、と思うが版元も書店も気づかなかったのだろうか。だとしたらたいへん間抜けな話である。そういう自分も中身については知らなかったので全然ダメだけど。山内容堂吉田東洋武市半平太坂本龍馬らの人格形成や政治的立場についての理解は深まったはずだ。「酔って候」などよりはるかに上。
流離譚〈上〉
安岡 章太郎
4061982001
流離譚〈下〉
安岡 章太郎
4061982036