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ジーニアス和英辞典第3版

11月に出ていた『ジーニアス和英辞典第3版』について、箇条書き的にでも目についたところを書いておかないと、この日記の存在意義がなくなると思ったので一応書いておこう。なお奥付の発行年月日は2011年12月10日になっている。

ハイブリッド方式はどうなったか

まず、悪評高かった「ハイブリッド方式」をやめて、普通の和英辞典になった。「ハイブリッド方式」というのは、日本語の見出しのすぐ下には英訳がくるんじゃなくて、英和辞典の英語見出しに相当するものが中見出しとして一つあるいは複数示されてそこから先は英和辞典になっているという方式。これは、「和英辞典を引いてもそれだけでは目的が達成できず、また英和辞典を引き直すことになって手間がかかる」というユーザーの不満にこたえようとしたものだと思う。こういう事情に、コンピュータを駆使した編集手法の恩恵もあって、ある種冒険的な試みを具体化した『ジーニアス和英辞典』の初版が出たのが1998年のことだった。ところが、英和辞典のほうは第一義的には英語の文献を読むのに資するものとして作られているので、一挙に英和に飛ばされると欲しいものにたどり着けないことが多い。見出しそのものがなかったり、そこに記述されている用例がとんちんかんなものだったり。というわけで「使えない」という声が圧倒的だった。第2版でも同じ方式をとりつつ、中見出し以下の記述に手を入れて改善を試みていたが、やはり中途半端で、「使えない」という評価がくつがえることはなかった。
改訂に取り組んでいるという話はずいぶん前から漏れ聞こえていたので、ハイブリッド方式でどれだけの改善ができるのだろうと注目していたが、ふたを開けてみると完全に捨て去られて、普通の和英辞典になっていた。中身は別として、学習辞典として考えれば、日本語をキーにしたシソーラス的な学習辞典として新しいものを切り開いていく可能性もあっただけに、外野の勝手な言い分だが、その方向性をもう少し追求してほしかった気もする。

豊富な日本語コロケーション

先ほど「中身は別として」と書いたが、中身についてはかなり高く評価できるものと思う。たとえば、日本語で「乗じる」という言葉を使うなら、よく一緒に現れる語でフレーズを作ると「混乱に乗じる」あたりがまず思い浮かぶ。で、『ジーニアス和英辞典第3版』で「乗じる」の項を引くと、「混乱に乗じる」というフレーズが用例としてちゃんと出てくる、という具合。日本語ネイティヴスピーカーの語感において頻出と思われるコロケーションはかなり拾ってあるという印象だ。ハイブリッド方式をやめてスペースが増えた分を、用例と見出し語の増強に費やしたのではないか。用例による典型的なコロケーションのカバー率は、今ある和英辞典の中でも一、二を争うレベルにあると思う。ただし、英訳例に対してスピーチレベルや非文情報などの注記はあまり示していない。日本文で示されているものに相当する英訳を示しているのだから、その範囲で判断せよということのようだ。想定読者はあくまでも日本語のネイティヴスピーカーだから、日本文で示されているものの含意は理解できることが前提になっているのだろうが、高校生も対象読者だとすると、やや要求が高すぎるような気もする。

対象は高校生以上?

日本語の典型的なコロケーションを数多く収録してあることを上で高く評価したが、日本語話者としても発展途上の高校生を基準に考えれば、数多い用例を一つ一つ読み込んでどの言い回しが自分の求める英訳にふさわしいかを判断するのは相当難しいと考えられる。基本的な語だと必然的に用例の数も多くなるので、適当なガイド役がないと選びづらいだろう。そういう意味で、高校生が学習に使うということにあまり重きを置いていないのではないかという気はする。単なる印象にすぎないが。また、本体3500円で類書より200円以上高い価格設定もその印象を後押しする。
ジーニアス和英辞典
南出 康世
4469041750