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今日は何の日:7月6日

スコット・ラファロ逝去

ジャズ・ベーシストのスコット・ラファロ Scott LaFaro が1961年7月6日、ニューヨーク州のハイウェイでの交通事故で亡くなりました。25歳の若さでした。

ラファロはビル・エヴァンス Bill Evans のトリオ(もう1人のメンバーであるドラムスはポール・モチアン Paul Motian)での演奏で特に知られています。ピアノトリオにおいてリズム面と低音部で支えるというそれまでの標準的なベースの役割をはみ出して、自由に動き回ってピアノと絡み合うスタイルは、エヴァンスを大いに刺激したものと思われます。そればかりでなく、以降のモダンなピアノトリオの原型になったとも言えます。

このメンバーでの録音は、1959年12月28日録音の『ポートレート・イン・ジャズ』Portrait in Jazz に始まり、『ワルツ・フォー・デビィ』Waltz for Debby, 『サンデー・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガードSunday at the Village Vanguard, 『エクスプロレーションズ』Explorations まで期間にしてわずか1年半あまり、アルバム4枚だけですが、いずれも何十年経っても色あせず愛聴に値するものです。

このうち、『ワルツ・フォー・デビィ』と『サンデー・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』の2枚は、ニューヨークのジャズクラブであるヴィレッジ・ヴァンガードで1961年6月25日に行われた5セットのライヴ演奏から選んで編集したものです。ラファロが亡くなったのは、この素晴らしい演奏から10日後のことです。誰しも想像すらしていなかったことでしょう。エヴァンスは衝撃のあまりしばらく演奏活動をやめてしまいます。

上記の4枚の中でも最も有名であろう『ワルツ・フォー・デビィ』を私が初めて入手したのは、1990年代初め頃のCDで、オリジナル盤の順番ではなく別テイクを直後に続けるというスタイルの編集でした。つまり、Waltz for Debby のテイク2(オリジナル盤収録)の直後に同じ曲の(オリジナル盤には未収録の)テイク1が続いていたりしたわけです。テイクの違いを分析しながら聴くにはよかったのかもしれませんが、流れがぶった切られてつらいものがありました。その後、別テイクは別テイクでまとめて後ろに配置するスタイルのCDも出ました。それから、CD3枚組のコンプリート版すなわち6月25日の演奏すべてを収録した商品も出て買いましたが、「世界初登場」というふれこみの曲が、機材の不調で中断されたものだけだったりして、改めてオリジナル盤の演奏と編集の素晴らしさを感じたものです。

そして今回これを書くに当たって調べると、昨今のLP復活ブームに乗って、アナログ盤も発売されているではありませんか! やっぱこれだよねー。村上春樹もエッセイ集『ポートレイト・イン・ジャズ』の中で「片面三曲でひと区切りをつけて、針をあげて、物理的にほっとひとつ息をついて、それで本来の『ワルツ・フォー・デビー』という作品になるのだと僕は考えている」と書いています。しかし現在の我が家にはアナログ再生装置がないのです……。