ニーナ・ゲオルゲ『セーヌ川の書店主』

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集英社が新聞に出した広告を見てオンライン書店で買ったのが『セーヌ川の書店主』。訳者があとがきで書いているように、いろんな角度から読める小説で、僕はメロドラマとして楽しんだ。この主人公と僕はほぼ同年代だというところからくる親近感もあったし、80年代の終わりから90年代にかけてよくフランス映画を見ていた頃の空気を懐かしく思い出しながら読んだ。

昔のことを思い出して身をよじらせるような後悔の念にとらわれることは誰しもあることだろうと思うが、この小説の主人公はその特に重いやつに20数年とらわれて生きてきた、セーヌ川に浮かぶ艀の書店を経営する50歳の男性。あるきっかけでその過去の体験に向き合うことになる。そしてそこから始まるロードノヴェル。(版元の紹介ページ

連想したのはクロード・ルルーシュ監督のフランス映画『男と女』。あの映画を見たのは大学生の頃だっただろうか、ダバダバダ、ダバダバダという主題歌だけは知っていて、ベタなメロドラマかと思って軽い気持ちで日比谷シャンテでやっていたニュープリント再上映を見に行ったら、スピード感あふれるインディペンデントでスタイリッシュな映画で感動したものだった。サントラも買った。主人公の夫を演じたピエール・バルーがブラジルで録音したという「サンバ・サラヴァ」もめちゃかっこよかった(ほぼ日刊イトイ新聞にバルーへのインタビューが載っていて、『男と女』の制作エピソードも語っている。あのときの感動がよみがえる)。

『男と女』を連想した理由は雰囲気だけではない。主人公の名前がジャン・ペルデュ、Perduというのは過去分詞で、英語のlostに当たり、『消え去った』といった意味を持つ。ピエール・バルー加藤和彦ら日本のミュージシャンと録音した「ル・ポレン」というアルバムに、Perduというタイトルの曲が収録されているのだ。これは偶然だろうか。

フランスの自由な空気へのあこがれを再燃させてくれた読書体験だった。