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50代男性が健康と幸福を追求する日常をつづります

こっちをお向きよ世界〜MAJで思い出した山下久美子

先日の晩、NHKを見ていたらいつもと違う番組が始まって、年輩の男性がぼそぼそしゃべり始めました。聞いているとどうやらその男性は細野晴臣で、イベント名はミュージック・アワーズと聞こえましたが、アにアクセントを置いて言ったのでhoursかと思いきやawards、しかも主催者のカタカナ表記はなぜか単数形っぽいアワードなのでした(英語表記は複数形でAwards)。

awardはアウォードと読んでほしいものです。できればウォーのほうを強く発音して。

それはともかく。

ミュージック・アワード・ジャパン Music Awards Japan は、一般社団法人カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会が主催する、日本のグラミー賞を目指した音楽賞。その第1回授賞式をNHKが中継していたわけです。

中継は早い段階で見るのをやめてしまったのですが、わりと最初のほうから日本の音楽制作者の海外進出を後押ししたいという意志を前面に打ち出していたのが興味深いと思いました。細野氏を登場させたのも、世界的に人気を得ることに成功したYMOの人という文脈でしたし、他の表彰者も多くが現在進行形で海外進出に取り組んでいる人たちでした。

授賞式に文化庁長官の都倉俊一がプレゼンターとして現れたことで、行政からの関与の匂いもそこはかとなく漂ってきますが、その辺はちゃんと調べたわけではないのでわかりません。クールジャパン事業のような失敗に向かわないことを祈ります。

海外進出が重要課題と捉えられているのは、K-POPの成功に刺激された面が大きいのでしょうが、資本を集中投下するような方法論を真似る必要はないんじゃないかなと思っています。アニソン周辺のような強度の高いJ-POPが海外でも受けているらしいので、そこを集中的に推していこうという方向は考えられますが、政策的に展開するなら、支援する対象はジャンルをなるべく広くしてほしいです。

他のアジア諸国に比べて日本は経済的な離陸が早かったので、並行して生まれた文化的資産の蓄積も大きい。西洋音楽を基盤とするポピュラー音楽にしても、幅が広く層も厚い歴史的な資産がある。そこが日本の強みでしょう。その中から発掘されたシティポップのような鉱脈は他にもあるだろうと思っています。

個人的には、80年代によく聴いていた歌謡曲とロックの中間みたいな存在が海外でどう受け入れられるか、反応を見てみたい気がします。日本のレコード会社に資金があって、海外進出なんか狙ってなくて純粋に日本市場向けなのに海外で録音していた時代の産物。

代表的な存在として、山下久美子8枚目のシングル「こっちをお向きよソフィア」を挙げます。かっこいいんだけど日本人ぽい。昔ラジオでイントロが聞こえてきた瞬間、洋邦取り混ぜて事前の曲紹介なくかける番組でしたが、日本人の作品だとわかったのを覚えています。イントロでギターが和音を響かせるんじゃなくてほぼ単音でメロディー、それも歌の主旋律じゃないメロディーを聞かせるところが文芸翻訳の世界なんかでいう和臭を感じさせるんですよね。

ところが、先日たまたまWikipediaを見たら、この曲はニューヨークのパワー・ステーションで録音したもので、編曲もギターもヒュー・マクラッケンだったというのを知りました。ビリー・ジョエルストレンジャー』やポール・サイモン『時の流れに』をはじめとする数々の名作に参加してきたギタリストです。レコーディングメンバーは、ほかにドラムスがリック・マロッタ、ベースがトニー・レヴィン、キーボードがドン・グロルニックという面々。めっちゃ本場! 自分の感覚はつくづく当てにならないなと感じたのと同時に、デモテープにこのイントロがあっておもしろいと思ったので採用した可能性があるかもしれないとも思いました。いろんな文化圏の人に聴かせてみたい。ハスキーで薄い歌声も世界にあまり例がないんじゃないでしょうか。

山下久美子はストリーミングで聴ける作品が増えてきましたが、この曲が入った全編ニューヨーク録音のアルバム Sophia はまだ解禁されていないようです。待ってます!

山下久美子 Sophia