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辞書作りの舞台裏(2)

辞書の約束事

辞書の約束事で読者の皆さんにぜひ押さえておいてほしいことは、まず第一に、どこに何が書いてあるかという情報です。ほかに、いろんな記号類があるので、これも覚えておかなければならないような気になりますが、そんなに難しいものではないので、辞書に親しむうちに自然に覚えてくると思います。四角囲みの中に「名」と書いてあったら名詞のことだとか、そんなに考えなくてもわかりますよね。英英辞典の世界なんかでは、昔は文型を独自の記号で何種類にも分類して、凡例のところでものすごくきめ細かく解説する、なんてスタイルのが出てきたこともありますが、今ではそういう極端な独自ルールというのはすたれてきていて、あんまり予備知識がなくてもある程度は内容がつかめるような方向に進化してきています。
どこに何が書いてあるか、まずは見出し語のレベルでいうと、何を見出し語としているのか、ということです。英語には、2語以上でひとつの単語のような働きをする語句というのが非常にたくさんあります。たとえば、time bombで「時限爆弾」という意味になります。こういうのを専門用語で分離複合語と言いますが、ほかにいわゆるイディオムというか、ひとまとまりで特殊な意味になる成句とか句動詞というのもあります。こういった語句を素早く引けるようになるのが、辞書を使いこなすコツの一つです。早く引くには、どこにあるか見当がついていなければなりません。分離複合語でいうと、『ウィズダム英和辞典』の場合は、その第一要素つまりtime bombの場合だったら最初の語のtimeの項目の一番後ろに、まとめて並んでいます。ウィズダムの場合は、分離複合語の第一要素はスワングダッシュで省略する書き方を採用していますので、〜 bomb という形で載っています。これが、辞書によってはそういう並べ方ではなくて、普通の見出し語として並べる場合もあります。三省堂の場合は、学習者向けではない『デイリーコンサイス英和辞典』なんかがそうです。辞書でも版によって並べる位置を変える場合があります。並べ方で必要な行数が変わってくるからです。まとめて並べるほうが行数は少なくてすみます。
デイリーコンサイス英和辞典
三省堂編修所
4385108730
もっとささいな例では、同じ綴りで大文字と小文字の違いがある場合にどっちを先に載せるかというのもあって、これも辞書によって違いがあります。大修館書店の『ジーニアス英和辞典』では、小文字が優先ですが、『ウィズダム英和辞典』では大文字が優先です。
ジーニアス英和辞典
小西 友七
446904170X
というわけで辞書の約束事を覚えておくと使いこなせるよ、という利用者サイドの話をしたわけですが、制作していく上では、あらかじめ決めた約束事に従って作り上げていくという作業が非常に大きな比重を占めます。今の学習英和辞典は、ただ品詞と語義と用例が載っているだけじゃなくて、どんな文型をとるか、一緒に使われやすい語句は何か、といった語の使い方に関する情報が非常に充実しています。それらをちゃんと整理して見せるために、どこにどういう順番で載せるかというルールをあらかじめ決めておくわけです。かかわる人数も多いし、制作期間も長いので、しっかりルールを決めておかないとぐだぐだになってしまいます。先ほどは辞書の記号みたいなこまけぇこたぁいいんだよ!といった感じで説明しましたが、それは使う側の話で、作る側がそれだと非常に使いづらいものになってしまいます。そういうところのコントロールが、編集という仕事の中で非常に大事な要素です。
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