オックスフォード英語大辞典物語

原書 "The Meaning of Everything" ISBN:0198607024けど,読んでない。図書館に翻訳があったので借りてみた。

1857年にイギリスの言語学会(The Philological Society)で構想が発表された「歴史的原理に基づく新しい英語辞典」すなわち後のOEDの前史から現代までを読みやすくまとめたもの。サイモン・ウィンチェスターがオックスフォード大学出版局の全面的な協力を得て書き上げた。『博士と狂人』ISBN:4152082208ドの一つである編者のジェームズ・マレー(本書の中ではマリーと表記)と用例収集協力者のウィリアム・マイナーの交流を活写した人だ。

ここでもマレーの苦闘は感動的だ。膨大な編集費用を賄うため,分冊での発刊となったが,2番目のBがいきなり語源的に難しい箇所で躓き始め,一部からは分量を切り詰めよとの意見も出るが,最終的にはもともとの構想の通りに仕上げたというのには居ずまいを正される思い。

ただこれ,翻訳があまりにも素人臭い。『博士と狂人』と同じ著者とは思えないくらい。クレジットは苅部恒徳新潟国際情報大学教授。もともと英語史学者で辞書編纂家であって翻訳はおそらく専門外だから仕方がないのかもしれないが,正直言って学生の英文和訳を読まされているような気分だった。
「最も頭がよく最も賢い人たち」なんてフレーズが出てくる。英語ではこういう類義語を重ねる表現はよくあるけど,辞書に出てくる訳語をそのまま2つ並べるなんて。辞書の縦列 column のことを「コラム」と訳してるんだけど,それだと囲み記事かと思ってしまう。OEDは「1ページに3コラムある」という行があるんだから,気づいてほしい。

ほかにも「トーマス」と「トマス」が章によって違っていたり,「ブリタニカ百科辞典」という表記があったり,極めつけに3点リーダーじゃなくてナカグロ3つを使うなど,編集にも粗が目立つ。こんなんだったら原稿整理からおれにやり直させてくれ,って感じ。

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