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アラン・シリトー

ちょっと前のことになるが、英国の作家アラン・シリトーAllan Sillitoeが亡くなった(現地時間では4月25日)。少し思い入れのある作家なので簡単に書いておきたい。
大学に入った頃、何の気なしに本屋で見つけた永川玲二訳の新潮文庫土曜の夜と日曜の朝』を読んで、主人公の若者の軽やかな生き方に憧れたものだった。軽やかというとちょっと違うな。50年代の労働者階級の若者だから、自分と共通点はあまりない。でも自分は他人からの評価とか親の期待とか、いろいろなものをしょってるのに対して、階級社会に生きる彼らは大きな枠が固定されている代わりに、日々の生活はそういうものから自由で楽しそうに見えた。優等生がひそかに不良に憧れる感じかな。
当時(1980年代後半)は、シリトーは日本でもまだそこそこ人気があって、この長編のほかに集英社文庫で3,4冊短編集が出ていた。あと、単行本もかなりあった。まだ福武書店だった現在のベネッセ・コーポレーションからリアルタイムの新作も訳されて出ていた。『渦をのがれて』というタイトルで、怒れる若者のイメージとは違う不倫の話だかなんだかで、それは読んでいない。
いつの間にか人気がなくなってきて、今でも簡単に入手できるのは有名な『長距離走者の孤独』ぐらいになってしまった。時代や社会的な背景から切り離して鑑賞可能なクラシックたりえたのはあの作品ぐらいだったということかもしれない。僕の感じた自由さというのも結局そういう儚いものだったのかと思うと切ないなあ。
長距離走者の孤独 (新潮文庫)
4102068015