男が女を愛する時

木村東吉『ロング・ロング・トレイル』は産業編集センターから出ている「わたしの旅ブックス」というシリーズの1冊。著者のことはモデルとして認識していました。この本は「旅ランの先駆者でありアウトドアの達人でもある」と紹介される彼の現在の中心的な活動について、そこに至るまでの軌跡を含めていくつものエピソードを書き連ねたものです。

昔はこの人の著作を読むことがあろうとは想像もしませんでした。アウトドアライフとの接点などまったくできそうもなかったので。

ところが、不意に昔の自分でも興味を持てそうな記述が現れたのです。

それはカナダのアルゴンキン州立公園でのカヌーの旅について触れた章。

アビという鳥はカナダの国鳥で、その鳴き声にはトレモロ(警戒の声)、ヨーデル(警戒の声)、フート(家族への呼びかけ)、ウエイル(求愛の鳴き声)の4種類があるのだそうです。

ボクはその説明を聞きながら、ある歌を思い出し、ココロの中でなるほど、と頷いた。

その歌とは元S&Gのアーサー・ガーファンクルの「男が女を愛する時」だ。

この曲は多くのアーティストがカバーしているが、ガーファンクルのそれの前奏部分に、アビのウエイルの鳴き声が挿入されているのである。

ボクは何故、ラブソングの冒頭にコヨーテの鳴き声が入っているのか、それまでは理解できなかったが、あの遠吠えはコヨーテではなく、アビの求愛の鳴き声だったのだ。(同書p.130)

僕もこれを読んで初めて知りました。まあ、ラブソングだから動物の求愛の声を入れてみるというのはベタな発想かもしれませんが、パンフルートらしき笛の音とあわせてなかなか幻想的な仕上がりになっています……と思っていたところ、改めて調べるとパンフルートではなくジェレミー・スタイグのフルートだったようです。二重の衝撃を受けました。

この曲を収録したアルバムLeftyは学生時代に発売されてよく聴きました。スティーヴン・ビショップの曲が多く取り上げられていて、有名な曲ではSo Much in Loveや、ウェストサイド・ストーリーの挿入歌も入っています。佳作と呼ぶのがぴったり。