子供が学校で毛筆の習字をするようになって以来、冬休みの宿題として書き初めが毎年課されます。余った墨で本人以外も何か書くのが我が家での正月の恒例行事となっていて、ちょっと楽しみにしています。
今年のお題は「自由」かなあ、と考えていました。ちょっとつまんないけど、「経済的自由を獲得する」ことを今年の目標にしようと思っているので、年頭の抱負として。しかし学校から支給された紙が思った以上に長く、少なくとも4文字以上は書かないと埋まりません。考えてみれば「経済的自由」でよかったのですが、去年読んで一番感動した本のテーマにちなんだ言葉にしました。
読んだのはステファニー・ケルトン著『財政赤字の神話』、現代貨幣理論(MMT)の提唱者の一人が書いた概説書です。
通貨主権を有する国つまり他国の通貨や金などの裏付けがない自国通貨を発行する国では、財政を均衡させることは必要ではないつまり財政赤字を心配しなくていい、というのがその理論の一部ですが、なんかうさんくさいなあとしか思っていませんでした。しかし、日本は政府債務がGDP比で200%を超える水準になって何年も経つのに当面は破綻する気配がないということだけを考えても、実際そうなのかもしれないと思えてきました。そこで話題のこの本を読んでみたわけです。
感動したポイントの一つは、完全雇用を実現するために「就労保証プログラム」を導入すればよいという主張が組み込まれていることです。これはまあニューディール政策そのままというかケインズが大恐慌後に主張したことがやはり今でも生き残っているのかという感じなのですが、現代において仕事は人間の存在理由の大部分を占めているわけですから、あらゆる経済政策がそこを保証するのを出発点とすべきなのは当然だと思います。そこをちゃんと踏まえていることは大事。
そしてもう一つ、米クリントン政権は他国ですが多くのことを成し遂げたと思っていて、財政均衡を実現したことも大きな成果と認識していました。本書ではそれが実はその後の不況を引き起こしたとしていることも大きな驚きでしたが、読み進めるとたしかにそういう解釈も可能と思えます。彼らに悪意があったわけではなく、素朴に主流派の経済理論に基づいた政権運営を成功させたらそうなってしまった。
この本を読んでもなかなかMMTを心の底から信じ切ることはできないでいますが、傾聴すべき主張ではあると思いました。
環境保護的政策をとるための理論的裏付けにもなるし、多少なりとも左翼的な思考にシンパシーを感じる人は、現代貨幣理論をしっかり学んでおくことが必要だと感じました。今年はこれに関する本を積極的に読んでいきたいと思っています。