週刊東洋経済のChatGPT特集号が売れ行き好調で、ビジネス雑誌なのになんと3刷までいっているとのこと。日本政府もしっかり流行に乗っかっているし、勢いは目を見張るものがあります。
僕も仕事に活用しようと思い、いろいろな場面で試してみています。
まず、パソコンにやらせる作業というか、スクリプトを組むのに力を借りました。
note.com
これはそこそこうまくいったと思います。
次に、スーダン情勢に関連する調べ物をしていて思い出したことがあり、それをきっかけに連想を広げて文章を作るのに役立てることはできないかと考えました。
思い出したことというのは、英語の地名と定冠詞の関係です。
スーダンの国名の公式な英語表記は、the Republic of the Sudan です。
www.mofa.go.jp
これを知ったら驚く中学生はけっこういると思います。「地名にはtheがつかないんじゃないの?」と。
たしかに、国名でも the United States みたいに一般名詞的な名称には定冠詞を使いますが、固有名詞的な部分にはつきません。the United States of the America と書けばバツで、the United States of America が正しい書き方です。
アフリカの国名で比べてみると、例えばガーナ共和国は the Republic of Ghana であって、やはり Ghana の前に the はつけません。
ところが、Sudan には the がつきます。正確にいうと、辞書に「しばしば the 〜」といった注記がついているように、the をつけない言い方もありますが、上の外務省サイトに示されているように、the をつけることが多いのです。川や山脈、砂漠などの名称に基づく国名にそうした傾向が見られます。
ほかにどんな国名があったっけ、と思ってChatGPTに訊いてみました。
the Sudanやthe Bronxのように地名に定冠詞がつく英単語がありますが、ほかにどういった地名にtheがつきますか。
これに対する回答。
英語の地名には、定冠詞 "the" がつくものとつかないものがあります。以下は、定冠詞 "the" がつく主な地名の例です。
- The Hague (オランダの都市)
- The Vatican (バチカン市国)
- The Alps (アルプス山脈)
- The Sahara (サハラ砂漠)
- The Arctic (北極)
- The Bahamas (バハマ諸島)
- The Caribbean (カリブ海)
また、以下のような特定の場所を指す場合にも定冠詞 "the" がつくことがあります。
- the airport (空港)
- the beach (ビーチ)
- the hospital (病院)
- the mall (ショッピングモール)
- the park (公園)
- the zoo (動物園)
ただし、地名に定冠詞 "the" がつかない場合も多く、例えば次のような地名が挙げられます。
- London (ロンドン)
- Paris (パリ)
- Tokyo (東京)
- New York (ニューヨーク)
- Sydney (シドニー)
- Beijing (北京)
最初の例示の中にオランダのハーグが含まれているのは予想通りでしたが、それ以外はこれじゃない感がありあり。それぞれ理由があって the がついているのですが、理由が違うものも一緒くたにされているように見えます。
そこで意地悪く畳みかけてみました。
求めていた回答とは微妙に違います。例えば、The SaharaだとThe Sahara Desertの後ろの一般名詞Desertが省略されたものと考えることができます。では、the Sudanは何が省略されているのでしょうか。the Bronxの場合は?
すると、
申し訳ありません。回答が不十分でした。
"the Sudan"という表現では、実際には何も省略されていません。"Sudan" は単独でも地名として使われますが、"the Sudan" という表現は19世紀に現在のスーダンが英国領エジプトの一部だった時期に使われ始めたもので、当時の地政学的な背景から "the" が付けられたものです。同様に、"the Bronx" も "Bronx" という地名に "the" が付けられたもので、その由来についてはいくつかの説がありますが、確定したものはありません。
一般的には、地名に "the" が付くかどうかは、その地名が単一の場所を指すものか、複数の場所や地域を指すものか、または単なる場所や地形を指すかどうかによって異なります。
なんかそれらしいことを言っていますが、理由の核心は明確に述べられていません。言質を取られたくないごまかしの答弁のようで頭に来ますね。
スーダンについて、「当時の地政学的な背景」をもう少し詳しく解説してください。
と問い詰めます。
19世紀のスーダンは、オスマン帝国の支配下にありました。1881年、ムハンマド・アフマド・ビン・アブドゥッラーが指導する反乱軍がオスマン帝国に対して反乱を起こし、この反乱は「マフディー戦争」として知られるようになりました。この戦争は、1885年にマフディーによってスーダンが占領されるまで続きました。
1898年には、イギリス・エジプト連合軍がオマル・アル・バシール将軍を指揮してマフディー軍を破り、スーダンをイギリスの保護領としました。この時期に "the Sudan" という表現が広まったのは、スーダンがイギリス領エジプトの一部であったことからきています。つまり、"the Sudan" は、イギリス領エジプトに属するスーダンという地域を指す表現として使われるようになったのです。このような政治的・歴史的な背景から、スーダンには "the" が付くようになりました。
あれれ、なんか変なことになってきました。19世紀のオスマン帝国はスーダンまで支配下に収めていたんだっけ?
下の段落でも、オマル・アル=バシールというのは1998年にクーデターで政権を掌握した軍人で元大統領、現在も存命です。「連合軍が将軍を指揮してマフディー軍を破り」という日本語も変です。
最近よく見かける「ChatGPTの嘘松」みたいな話になってきたので、ここでやめました。
結局、知りたかったことは普通のGoogle検索で「スーダン 地名に定冠詞」と入れて出てきた論文「地理に関連する固有名詞と英語の冠詞の用法―コーパスを用いた分析―」を読めば解決しました。
現時点での結論としては、スクリプトのように入力(条件)と出力(目標)がはっきりしていてそれを結ぶ最適な経路を示させるといったケースでは期待通りでしたが、質問側が正解を持っていない場合は難しい感じ。
条件をそろえても、思うような例示を得るのも難しいんだなという感想を持ちました。他のアプローチも試してみたいと思います。