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学習辞典と一般向け辞典

id:zokkon:20060315 の続き。
英和辞典の歴史にそんなに明るいわけではないのだが,ぼくの理解では1980年代以降はだいたい次のような感じで流行が推移している。
学習用の英和辞典はそんなにメジャーな存在ではなくて,1970年代ぐらいまでは大人も使うような辞典を中学生・高校生も使うのが普通だった。研究社の『英和中辞典』とか,(小型辞典だが)三省堂のコンサイスとか。[追記:三省堂の『クラウン英和辞典』など,学習用もなかったわけではないし,ちゃんとした資料に当たって調べたわけではないので断言はできないが,売り上げ規模などの点で現在ほどの存在感はなかったはず。]
その流れを変えたのが,小学館の『プログレッシブ英和辞典』と旺文社の『コンプリヘンシブ英和辞典』という中辞典。これは本来一般向けの中辞典(だいたい収録語数10万語を超えるぐらいの規模)だが,どちらも語法・文法に関する記述が充実していて,大学受験生にも十分使える上級学習辞典の役割も兼ね備えたものととらえられた。
その後,研究社が『ライトハウス英和辞典』(初版は1985年)を出して学習用英和辞典というカテゴリーを確立する。その一方で,大修館書店が出した『ジーニアス英和辞典』(初版1987年)がその後の流れに乗った。これは一義的には上級学習辞典でありながら,一般向けの中辞典も代替できるという,ちょうどプログレッシブ・コンプリヘンシブとは逆の指向を持った辞典といえる。
一般向けとしては研究社の『リーダーズ英和辞典』(1985年初版)が大規模辞典として地歩を固めているが,電子辞書の普及で中辞典は市場がほぼ消滅したといってもよい。(大規模辞典としては小学館の『ランダムハウス英和辞典』があるが,これは専門家対象だと思うので除外した。)旺文社『コンプリヘンシブ』の後継である『新英和中辞典』(1999年刊)なんか辞書学メーリングリストで「出す意味が分からない」などと言われる始末だし,研究社も『リーダーズ英和中辞典』という何だかよくわからないものを出していたが,買った人どれくらいいるのかな。
学習辞典は学校という安定した市場があるので簡単には衰退しない。『ジーニアス』はそういう意味で非常にタイミングがよかった。もちろんいい辞書であることは間違いないが,学習辞典として必ずしも最善とは言えないと思う。連語やレキシカルフレーズ(ひとまとまりの語句で特定の意味になるもの)の強調も第3版の目玉としてうたったわりには中途半端な印象。電子辞書に採用され続けているのも,むしろ項目数など一般向け要素の方が大きいのではないか。
しかし一般論として,学習辞書に求められるものと一般向け辞書に求められるものは異なるから,現在のように代替物がそれとわからない形で広く受け入れられている状況はあまりよくないと思う。先日触れたプログラミング言語の名称をどこまで採用すべきかという問題も,新語などどこまでの範囲を収録するかという方針にもかかわってくる。そういう意味では,早く一般向け辞書が自立できるような状況が望ましい。そのためには,英辞郎の制作方法やビジネスモデルがヒントになるだろう。しかし英辞郎にしても第2版は初版ほどの勢いはないみたいだし,そもそも品質面での疑問もあるし,難しいなあ。

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