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50代男性が健康と幸福を追求する日常をつづります

you might want to ...

宮川さんの「学校では教えてくれないエンジニアリング英語」は,文字通りエンジニア向けの英語講座だけど,日常生活でよく使われながらも教科書や辞書にはあまり取り上げられていないフレーズが登場しておもしろいので,楽しみにしている。英語教育関係者も見たらいいかも。第3回は You might want to ... という言い回しが主題。高校1年までに習う単語から成っていて別段難しいフレーズではないのに,非ネイティブがニュアンスを汲み取って正確に使うのは難しい,という少々やっかいな表現。

これは慣用句で「〜するといい」というアドバイスに使うフレーズだということがわかりました。「〜するといい」には他にも You'd better ... とかの言い方がありますが、You might want to ... はあまり押し付けがましい感じがしないのでよく使える表現だとおもいます。

ウィズダム英和辞典第2版』(三省堂)では,助動詞 might の項目の語義8に次のような形で記述されている。

[控えめな提案・助言]【might do】…してもよいのではないか(! 通例肯定文で; had betterのような切迫感はない)
He just showed up. You might want [like] to see him right away. 彼ならちょうど来たところです. すぐに彼にお会いになるのもいいでしょう (! しばしばwant, like, wish, preferなど希望を表す動詞を伴う; この用法ではcouldよりもmight, mayが好まれる)

『レクシス英和辞典』(旺文社)では,might の項の COMMUNICATIVE EXPRESSIONS 欄に,

You might want to revise your presentation script a bit. 発表用の原稿を少し修正したらどうでしょうか(◆ 何かをするようやんわりと勧める丁寧な命令)

と説明してある。2つの辞書でニュアンスに差があるのがちょっと気になるが。
知っているはずの単語でも辞書を引くと思わぬ発見があることもある好例。
ウィズダム英和辞典
井上 永幸 赤野 一郎
4385105693

お買い物

 安倍首相が公邸に引っ越して,ついでに渋谷でお買い物をしたというのがニュースで流れていた。
 7時のNHKニュースで映っていたのは,東急ハンズの場面と,書店で辞書を手に取る様子。

書店では国語、漢和、英和など各辞典をそろえた(日経ネット

とあるが,どの辞典なのかもうちょっと詳しく報道してほしいなあ。NHKニュースで映っていたのは『大辞林第3版』だったが,手にとって見ただけでほかのを買ったんじゃないよね……
大辞林 第三版
松村 明
4385139059

ワンセグ対応電子辞書

 シャープがワンセグ対応の電子辞書発売ってニュースを知ってコーヒー吹きそうになった。テレビに電子辞書か。どういう場面を想定しているんだろう。

「普段はさまざまな情報を電子辞書で引き出し、新しい情報はテレビニュースでチェックするというスタイルを提案したい」と意気込んでいる

なんて書いてあるが,実際には

市場開拓のため電子辞書との融合を思いついた

というところが重要。つまり,思いつきで商品化してしまった,ということだと思う。試みとしてはおもしろいけどね。でもこういう多機能化は諸刃の剣。ワープロだってそれで衰退したようなものだし。電子辞書時代の終わりの始まり(あれ?このフレーズ前にも使ったような気がするなあ)と言えるかもしれない。
多機能化を進めるなら,つけるべきはテレビじゃなくてテキストエディタとWWWブラウザだと思うけど。
自分で買うなら,今のところ(会長が取締役会で解任されて大騒ぎの)セイコーが出しているSR-E10000だな。起動が遅いらしいのが難点だが。
SEIKO IC DICTIONARY SR-E10000 (22コンテンツ, 英語充実モデル, 音声対応, シルカカードレッド対応)
B0009PN5Z8

ガリバーのやり方

「知ったかぶり週報」11月17日(金)の記事で紹介されていた考え方には考えさせられるものがあった。

業界第一位は、他企業が新機軸の商品を打ち出してきたら、同じような商品をすぐに出し、圧倒的な資本力と営業力で対抗する「同質化戦略」をとるべきなのである。そう考えると、出版業界においては講談社という出版業界の巨人は今までずっと同質化戦略を取ってきたことがよくわかる(「POPEYE」に対抗して「HotDogPress」を出したり)。

英和辞典業界で言うと,大修館書店の『ジーニアス英和辞典』はまさにこれか。

大修館書店のウェブサイトで,『ジーニアス英和辞典第4版』の改訂趣旨などについて解説した文書を読むことができる。同社の広報誌『GCD英語科通信』をPDF化したもののようだ。

ここで初めて「ジーニアス・コーパス」という名称を目にした。これによると,以前からコーパスは作っていたが今回初めて広告宣伝上も前面に押し出したということなのだろうか。コーパスを自前で準備した初の英和辞典である『ウィズダム』への対抗意識があるのだろうか。そして,新しく今回の版から編集委員に加わった中邑光男先生が,独力で1億語の米語コーパスG4Cを完成させたとのこと。でも,その構成を見ると,「2000年以降にアメリカで発行された新聞・雑誌,放送された番組の英語から作成する」とあるので,バランスはあまり考慮されていないようだ。個人でやるには限界があるということではないのか。いずれにしてもコーパスに関しては特筆すべきことは特にない。

今回の改訂でもう一つ注目を集めそうなのが,前のエントリでも書いたとおり前置詞などの概念図。これも『Eゲイト』などが既に取り入れているもので特に目新しいものでもない。でもジーニアスがやるから,という安心感を持つ人がいるだろう。

「ジーニアスのどうでもいい細かい文法・語法注記が日本の英語教育をダメにした」とは全然思わないが,「G史上最大の改訂」がどれほどのものなのか楽しみにしたい。

abide

 『ジーニアス英和辞典第4版』(大修館書店)の内容見本を見る機会があった。a の一部の項目が抜き刷りのような形ではさみこまれていて,前置詞の about や above に『Eゲイト』(ベネッセ)の‘コアイメージ’ばりの概念図が示されているのが目を引く。これは一部の学校の先生方には受けそうだ。個人的には,about にドーナツみたいな絵が示されたところで何か理解の助けになるとは思えないのだが。
 一つ気になったのが,abide の記述。現代では abide by sth の形で「…を守る,…に従う」という意味になる用法で使われることがほとんどなので,語義の中ではなく成句として独立させて示している(研究社の『ルミナス』などと同じ扱い)が,これに(古・正式)というレーベルをつけている。「正式」はともかくとして,「古」は違うんじゃないの?第3版では自動詞の語義2だったが,「古」も「正式」もついていなかった。新聞なんかでもわりと見かけるし,『ルミナス』はT2というロゴをつけている。TOEIC重要語のしるし。本になったときにもそのままだったらちょっと失望だな。


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determiner

 mixiでの某氏とやり取りで,今 determiner はどういう扱いになっているのかという話題が出たので,ちょっと調べてみた。これは日本語としては「限定詞」あるいは「決定詞」と訳されている。どちらが主流なのかはちょっとわからない。まだどちらに決まったと言い難い状況なのではないか。「後続の名詞に対する情報を与える品詞」のことで,伝統文法で冠詞と呼ばれている a, the や,代名詞の所有格がこれにあたる。
 今では英英辞典の多くが determiner という品詞を採用していることもあって,高校の先生方にも浸透してきている印象がある。英和辞典は,上述の通り定訳がさだまっていない上に,学校でもこの概念を教えていないから,採用しているところはまだないようだ。
 学習英英辞典を見てみると,マクミラン,CALD (Cambridge Advanced Learner's Dictionary), COBUILD は a, the の品詞として determiner だけを示している。LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) は indefinite/definite article と determiner を併記している。OALD (Oxford Advanced Learner's Dictionary) はいちばん保守的なのか,indefinite/definite article だけを示している。
Oxford Advanced Learner's Dictionary 7th Edition Paperback with Compass CD-ROM
A.S. Hornby
0194316491

組版の問題

 『ウィズダム英和辞典第2版』について,english linux farmer さんが指摘している「英単語間のスペース処理が間延びしている箇所がある」というのは具体的にはどこなんだろう。argue の他動詞の用例なんかは確かに間延びしているけど,前半部分だけということはないと思う。unless の会話文の用例とか,囲みの中だってけっこう開いているし。たしかに近年の自動組版は間延びしがちだけど,ウィズダムは美しい方だと思う。私見では目だってひどいのが小学館の『ユースプログレッシブ英和辞典』。見出しすらびよーんと伸びてるところがある。たとえば p. 262 business とか,p. 240 breeze とか。
ウィズダム英和辞典
井上 永幸 赤野 一郎
4385105693