今年はミュージシャンの訃報が相次いでいます。チック・コリア、村上ポンタ秀一…先週は元T-スクエアのキーボード/ピアノ奏者、和泉宏隆氏が亡くなったとの報道に大きな衝撃を受けました。急性心不全、まだ62歳という若さ。
高校時代、バンドやろうとしたときに友達が作ってくれたカセットテープに入っていたのが、ザ・スクエアの『うち水にRainbow』からの楽曲でした。そのカセットからの曲で何かやったのかどうか記憶にありませんが、それ以来フュージョンも聴くようになりました。
その次のアルバム ADVENTURES もよく聴きましたし、毎年のように春になると Omens of Love を聴きたくなります。謹んでお悔やみ申し上げます。
和泉宏隆の訃報が流れた前日には、エンジニアのアル・シュミットの死去も伝えられました。先日その盟友トミー・リピューマの伝記を読んだところだったので驚きました。リピューマの制作手法は、かかわる人たちとの信頼関係を築くところから始まる部分が大きくて、アル・シュミットにはミックスに関して大きな信を置いていたようです。
そのリピューマ伝は邦訳(『トミー・リピューマのバラード』シンコー・ミュージック)が出ることを知らなかったので原書のKindle版を読んだのですが、そこには章の切れ目にSpotifyのプレイリストが載っています。スタン・ゲッツの伝記を読んだときにはサブスク音楽サービスをその都度検索して聴いたのですが、これから読む人のためにもプレイリストを作ったほうがいいんだろうなあとは思っていました。寄る年波で、そこまでする気力が失われて久しいのですが。これならそんな手間をかける必要もない。実に未来的なサービスです。
昨年アルテスパブリッシングから刊行されたカエターノ・ヴェローゾの『熱帯の真実』は、本文中に登場する楽曲のプレイリストを版元が作成して公開しています。音楽書はこういう形態が標準になっていくのでしょう。
文芸なんかでも、「サウンドトラック」と称して作品の世界に関連する楽曲のリストを巻末に載せたりする作品がたまにあったようなおぼろげな記憶がありますが、電子版では最初からそれを組み込めるわけです。すでにそうした試みは行われているのかもしれません。これまでの媒体の枠にとらわれない新しい作品が生まれることを大いに期待したいところです。