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50代男性が健康と幸福を追求する日常をつづります

ロックンロールの語彙と文法はみんな佐野元春に教わった


55歳になりました。もう還暦が視野に入ってくる年齢ですよ。そのわりにまだ事業も軌道に乗ったとは言い難い現状ですが……。

自分へのプレゼントというわけでもないのですが、佐野元春&The Coyote Bandのコンサートに行ってきました。6/12神奈川県民ホール。チケットサイトを見ていて、まだ席があることがわかったので衝動的に購入しました。東京公演はすでに売り切れていたので。

自宅から会場までは1時間以上かかります。それも小旅行気分が味わえてよかった。地下鉄の駅を出たら近代日本をつくった港町横浜のかっこいい建物。そこから山下公園を目指して少し歩いた先にあるホールです。

開演15分前でまだ長蛇の列だったので心配になった

神奈川県民ホールに行くのも、佐野元春の生演奏に接するのも実は初めて。デビューアルバムBack to the Streetのジャケット写真を撮影したのが、このホールの裏手にかつてあった赤い靴という店だったという裏話も披露し、会場は盛り上がりました。僕もそんな場所に居合わせることができてちょっと感動しました。

このツアーは7月に出るアルバム『今、何処(Where Are You Now)』の発表が目前というタイミングですが、4月にも『ENTERTAINMENT!』というアルバムを配信のみですがリリースしているのです。活動の充実ぶりがうかがえます。

ツアーはまだ2公演残っているとのことなので、具体的な曲名は伏せますが、中盤はコヨーテバンドとの近作が多かった。エイトビートやスカで疾走感を堪能しました。

MCでも触れられていましたが、コロナ禍でも佐野元春芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したり、書籍『ザ・ソングライターズ』を刊行したり、話題には事欠きませんでした。直近では、桑田佳祐が呼びかけて制作したチャリティーソング「時代遅れのRock'n'Roll Band」への参加があります。集まった5人それぞれが現役感ある歌声とギターを披露していましたが、佐野元春のパートは別格で、空気が一変したように感じました。

これまで熱心な佐野ファンというわけではなかったのですが、思えば中学生のころにラジオで聴いた彼の曲の数々がロックンロールのかっこよさを学んだ原体験です。

「ガラスのジェネレーション」の「見せかけの恋ならいらない」の最後、「いー」のメロディーがフラットするところとか。

「彼女はデリケート」冒頭の「どんなやつでもひとつぐらいは人に言えない秘密を持っているのさ」という言葉の並び、そしてメロディーでは「るのさ」に当たる部分のブルージーな感じ。

それから、同じ「彼女はデリケート」で「チープスリルに命を懸けてしまうのさ」の「かけて」で子音kが連続して、「け」の子音がやや甘い感触になるところ。ビートルズ版Rock and Roll MusicのI've got no kick against modern jazzのところで子音k, k, gがたたみかけるかっこよさに通ずるものがあります。そんなロックンロール魂を感じるポイントが初期作品には随所に現れます。

彼の活動はその時点から40年以上に及びます。これから追体験するのはなかなか大変ですが、かっこよさを改めて認識したので、1990年代以降の作品を毎日聴いているところです。佐野元春が今の自分と同じ55歳の時には、旧作を新たなアレンジで録音し直したアルバム『月と専制君主』を出し、コヨーテバンドとの新しい黄金時代を準備していました。僕も少しでも見習いたいものです。