z is for zokkon

50代男性が健康と幸福を追求する日常をつづります

インストール

そういえばそんなタイトルの小説があったなあ。読んでない。
さて,Safari 4が出たので,会社のWindows XPマシンに入れてみた。Safari 3に上書きされて入った。
そのインストール中に出てきた表示の英文がおもしろい。それなりに時間がかかる作業なので,「お待ちください」というのが出てくるわけだが,

Installing Safari
The program features you selected are being installed.
Please wait while Safari installs.

となっていた。

installという動詞が3か所に出てくる。最初のタイトル行は文になってないがSafariを目的語とする他動詞だということはわかる。主語を補うとすれば the installer ということになるだろう。次の行は being installed という受動態の現在進行形。これもまあ普通だろう。中学・高校生なら program features がひとまとまりの分離複合語で,you seleceted はそれを修飾する接触節だということにはちょっと気づきにくいかもしれない。
最後の行の installs には,一瞬戸惑った。Safariを主語とする自動詞だろう。install はふつう他動詞なのだが。これに類似する現象についてはid:zokkon:20050302で取り上げたことがある。一般に他動詞と見なされている動詞が自動詞として使われる(そしてその場合,他動詞で使われた場合の目的語となる語句が主語になる)現象。名前がついているはずだけど何といったっけ。4年前には「IT関係の文脈で多い」と書いてある。それは僕の主観や印象じゃなくて参照した論文にそう書いてあったはず。この場合もIT関係。英語圏の人には格別違和感なく受け入れられるものなのだろうか,それともギークっぽい言い方として臭みが感じられるのだろうか。

インストール
綿矢 りさ
4309014372

平成21年度大学入試センター試験

昨日行われた英語の試験問題を見た。
第1問は去年より難しくなってないかな。ちょっとイディオマティックな表現が例年よりも目立つような気がする(毎年同じことを思ってたりして……)。
Bの問2で正解は "I'll tell you what." で,これは「(提案・申し出を導入して)こうしてはどうでしょうか,こうしましょう」(訳例は『ウィズダム英和辞典』第2版より)という意味になるわけだけど,こんな表現はおれ社会人になるまで知らなかったな。リッキー・リー・ジョーンズのデビューアルバムを聴いてた高校生だったら知ってると思うけど(1曲目の Chuck E.'s in Love に出てくる)。あと I couldn't agree more. とか,That depends. とか。まあこの辺は成句的なものとして認識してなくても,だいたい文字通りだから意味はわかるか。
Rickie Lee Jones
Rickie Lee Jones
B000002KK2
全般に,センターの英文はやっぱりなかなかいいな,と思える題材もあったけど,そうでないのもあった。英文はオリジナルなのかな。フェアトレードの話とかはよかった。「10人に9人はチョコレートが好きで,あとの1人は嘘をついています」という導入部も笑えるし。
ただ,以前はちょっとほろりとさせられる物語文だった第6問が去年から普通の説明文になってしまい,今年もそうだったのはやっぱり残念。今年は辞書のいろいろを紹介するような文章で,それ自体は悪くないというかありがたいものなんだけど……。ちなみに文章の中で「定義文に用いる語彙を2000語に絞った英英辞典」というのが出てくるけど,それはおそらく LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) のこと。商品が特定できるような書き方をした文章というのもちょっと珍しい気がする。
Longman Dictionary of Contemporary English
1405862211

administration

ウェッジウッドが経営破綻,というニュース。ガーディアンの記事Royal Doulton owner Waterford Wedgwood falls into administrationタイトルの表現が目を引いた。
fall into administrationというのは別にイディオムというわけではない。この場合のadministrationとは,高校生でも知っている「管理」という訳語が当てはまるわけだが,詳しく言うと破産管財人の管理ということになる。「破産管財人の管理下に入る」という,ニュースでよく見かける表現が使われているだけのことだが,動詞としてfallが選ばれているのがおもしろいと思った。『ウィズダム英和辞典第2版』のfallの項には,fall+補語の形では,補語としてどんな形容詞・前置詞句・名詞が現れやすいか説明したコラムがある。そこでは「主語の意志に関わらないことを暗示する語句や文脈で用いられることが多い」とある。なるほど,資金調達がまままらず,心ならずも倒産に至ったわけである。
なお,BBCではgoes into administrationという表現を使っている。
ウェッジウッド物語
相原 恭子
4822226794

subprime

某社のオンライン辞書でsubprimeを引くと,「金利がプライムレート以下の」という訳というか説明が出てくるんだけど,これ違うよね。サブプライムとは「条件がプライムよりも低い」の意であって,金を借りるときに金利がプライムよりも低いんだったら条件よくなってるじゃないの。書籍版でも同じかな?
実際にはその条件とは金利が高いことだけじゃないと思うけど,まあそこは辞書の領域を超えてしまうだろう。
(下のアマゾンアフィリエイトは本文と必ずしも関係あるとは限りません)
研究社 総合ビジネス英和辞典
研究社辞書編集部
4767434602

新刊和英辞典

丸善に『ライトハウス和英辞典』(第5版)が出ていたので買ってみた。前の版が今は手許にないのでページ数も項目も比較ができないが,ずいぶん薄くなっている印象。定価も下げているね。本文の最終ページが1418ページ。帯には「基本語重視で収録項目を厳選」と書いてある。項目数については,同じく帯に「基本語重視の35,000項目」と大書してあり,その内訳が帯の表4側に「見出し約25,000+成句・複合語見出し約10,000」とある。研究社には『ルミナス和英辞典』もあるし,棲み分けの必要性を考えて賢明な選択をしたといえるのではないだろうか。
造本は,最近の辞書らしくノドのところが開きやすくていい。
中身に関しては,アクセント表記の基準が気になった。単独の語でも複合語/分離複合語でも,強勢の位置を示してあるものと示してないものがあるんだけど,どういう場合にアクセント記号を付しているのか,その基準が今ひとつわからない。例えば,p. 1337 の「よりどころ」で示した訳語のうち,authority にはアクセント記号がついているのに対して,foundation にはついていない。どちらも強勢の位置は規則通りなのだから,両方ともなくて全然かまわないと思うのだが。
もう一つ,これは発見してたいへん驚いたと同時に残念に思ったのだが,「文字化け」が残っている箇所がある。見出しはひらがなの次に漢字表記を示してあるのだが,p. 1296 「やせる」の周辺(つまり「やせおとろえる」など複合語を含む見出し)で,「痩」(もしくは「瘦」)が出るはずの箇所が〓になっているのだ。おそらく正字がコードになくて,ゲラの段階では〓で通して終わりのほうで手動で直すはずだったのが,最終的に直し忘れたといったところだと思うが,これはどうしたことか。経験上,大きな箇所は見落としがちだというのは確かだけれど,4か所も気づかないものかな。ほかにもあるかもしれない,全体の信頼性にも疑いが生じる,と読者に思われてしまうのは大きなマイナスポイントだ。他山の石としたい。
ライトハウス和英辞典<第5版>
小島 義郎 竹林 滋 中尾 啓介
4767422140

政策金利

昨晩のうちに欧州中央銀行などが協調利下げを発表したのが大きなニュースになっている。僕が中学・高校で勉強した頃は,「政策金利」という言い方はしていなくて「公定歩合」つまり中央銀行から民間の金融機関への貸出金の利率が金融政策を表す数字だったんだけど,今では金利が自由化されているので,もうそういった意味は持たない。それどころか「公定歩合」という言い方も変更されて「基準割引率および基準貸付利率」になっているそうだ。Wikipediaで知った。今の日本の政策金利は無担保コール翌日物。米国ではフェデラルファンド金利(federal funds rate)。
ところで,「政策金利」には英語の定訳があるのだろうか。某社の和英辞典には a policy interest rate という訳語が載っているが,これは直訳でウソくさい。こんな並びの語句は見たことがない。上記のWikipediaの項目には bank rate という訳が示されている。ただ,bank rateに対しても今まで「公定歩合」という訳があてられてきたんだよね。というわけでちょっと抵抗がある。
報道で使われている用語だと,key interest rate というのが日本語でいう「政策金利」に近いという印象がある。これを提案してみたい。あるいはhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/business/7658958.stmの表のキャプションに出てくる base rate とか。いずれにしても,熟語的な固定した表現があるというよりは,さまざまな表現を使って文脈で理解されるようにしているという解釈が適切かもしれない。