z is for zokkon

50代男性が健康と幸福を追求する日常をつづります

G4問題点(3)

woman の項がちょっとおかしい。
語義1a)があって1b)がない(数字は丸囲み)。第3版では1bを[形容詞的に]として別に立ててあったのだが,今回の改訂でその用例を含めて語義を1つにまとめた。その際にaを取り忘れた単純ミス。しかしこれはただaを取ればすむ問題ではないと思う。すぐ下にある語法囲みの「(1)複数名詞を修飾する時は……」という記述は,その前段に形容詞的な使い方に対する説明がなければ唐突の感を免れない。それに,woman が形容詞的に使われることはよくあって,学習者がそうした表現に出合って戸惑うことはありうるので,残しておいた方がよかった。

ところで,なぜ[形容詞的に]という用法を語義から削ったのだろうか。形容詞的な用法が特徴的な場合は形容詞を独立させるという方針かもしれない。たとえば,key は「重要な」という意味の形容詞のように使われることがあり,今回から形容詞としても立てている。pocket も同様。一方で,desk の項は語義1に[形容詞的に]「机上用の;机上でする」という記述を残している。これは単に方針が個々の執筆者まで行き届かなかっただけのようにも見えるが,そもそもこの方針は妥当なのだろうか。というか,形容詞用法を立てる基準が少しぶれているのではないだろうか。

key については以前書いたことがあるが,形容詞的な用法が浸透しつつある語なので,新たに形容詞の項目を立てることに違和感はない。[通例限定]と書いてあるのに Speeding up your work is key to your success. という叙述用法の例文も示してあるのはどうかと思うが。むしろ叙述用法も広がりつつあるからこそ形容詞扱いすべき語だといえるだろう。手元の資料には,very key という例も見られる(the very で「まさにその…」となる用法ではなく,「非常に」の意で形容詞を修飾するvery: There's only nine of us, so everyone has a very key vote.)。

これに対して,pocket は限定用法だけだし,比較変化もしないし,very に修飾されるわけでもない。名詞が他の名詞を修飾するという,通常の名詞の用法の範囲内と見ればすむ話ではないか。むしろ desk での扱いの方が妥当だと思う。

名詞の形容詞的用法については,八木克正『英和辞典の研究』(開拓社)の pp. 236-44 に「fun の名詞性と形容詞性」という論考が載っているので参考にした。
英和辞典の研究―英語認識の改善のために
八木 克正
475892130X