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50代男性が健康と幸福を追求する日常をつづります

麒麟がくるとき

今日、茨城県日立市の動物園に先ごろ生まれたキリンの赤ちゃんの話題がNHKニュースで取り上げられていました。やっぱり大河ドラマにひっかけてキリンの話題にはアンテナを張っているのでしょう。それはともかく、あんな大型動物でも赤ちゃんはやっぱりかわいいですね(少し前に生まれた時のニュースにリンクを張りましたが今は消されているようです)。

それを見て、キリンの飼育に取り組んでいる動物園の苦労話を読んだのを思い出しました。片野ゆか「動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー」(集英社文庫)です。

動物園で飼育環境を充実させて、飼っている動物たちの身体的・精神的な健康を向上させる「環境エンリッチメント」に取り組んでいる動物園と飼育員に取材したもので、ペンギン、チンパンジー、アフリカハゲコウ、キリンが取り上げられています。キリンの章に登場するのは京都市動物園で、今日話題になっていた園とはまた別のところです。

キリンは本来群れで暮らす動物なのに、動物園では単独で飼育されるものもいるとか。そして、ウシと同じ偶蹄目だという理由で、食事の内容など飼育の条件はウシのデータをもとにして策定されていたという驚くべき事実もこの本で明かされています。それまでキリンの飼育経験のなかった飼育員の高木直子さんは、環境エンリッチメントの取り組みとして、野生の生育環境と同じマメ科の植物を飼料とすること、そして葉の付いた枝をなめるようにして食べるという野生と似た形がとれるようにすることから始めるわけですが、それもなかなか一筋縄ではいきません。

詳しくは本書をお読みいただきたいのですが、キリンの話に限らず、驚いた後に「ああ、なるほど、それが当然だよねえ」と納得する話の連続です。

キリンは、ワシントン条約などの影響で海外から購入するとなると金額が高騰していて日本の動物園ではとても手が出せない状況だそうです。そうすると、ふやすには飼っている個体を使った繁殖を行うしかないのですが、雌雄のペアを同時に飼育する環境が整った園は限られているなどの事情でそれも難しく、そう遠くない将来に日本の動物園から消えてしまう可能性も十分あるらしいです。

動物園不要論などもよく聞く昨今ですが、動物を十全に生きさせようと苦労を重ねている人たちのおかげで、私たちが新たな目を開くきっかけになりうるものが存在しているということも忘れずにいたいものです。

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しばらく曇りがちらしい