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50代男性が健康と幸福を追求する日常をつづります

マラソンはつらい競技

札幌での大迫選手の走りに心を揺さぶられ、よーし俺も!とはならないのが底辺市民ランナーのダメなところ。でも、いいところでもあるかも。命にかかわる無茶はしないわけなので。

この8月は、雨と猛暑のため走りに行く日が少なく、なんと月の走行距離が現時点で14.7kmです。記録を取り始めてからの最低を更新するのは間違いないでしょう。

久しぶり(7月25日以来!)に5kmを走ったら、1kmあたり7分を超えるゆるゆるペースだったのに、終わってから足がなんだかガクガクしていました。持久系の競技は、練習して上達を実感することは少ないわりに、練習をやめたら失われるものが大きいですね。この調子だと、一度に10km走れるかどうかももはや怪しい。フルマラソンの距離を走れるようになるには最低で3カ月ぐらいかかるでしょうか。

とはいえ、マラソンという競技に対する関心がまったく薄れたわけではないので、題材にした小説なんかも時々読んでいます。

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違う版元なのに表紙の色味がそっくり

坂井希久子『ウィメンズマラソン』(ハルキ文庫)は店頭で見かけて買ってみました。オリンピック代表の座を手に入れたのに、ある事情で辞退を余儀なくされた主人公。シングルマザーとして再び五輪を目指すというヒューマンストーリー。2015年6月に単行本として刊行された、ちょっと前の作品なので、コロナのことを気にせずに楽しむことができます。人物造形にもリアリティがあり、性格がいいとはいえない主人公のこともいつの間にか応援してしまっています。

ただし、エリートランナーの話でもあり、この作品を通じてマラソンという競技の魅力を再発見するという読み方には適していませんでした。もっと普遍的な、明日もがんばって生きていこう的な感慨を覚える小説です。

この本となぜか表紙の色合いが似ている『シティ・マラソンズ』(文庫版は装丁が違い別の色になっています)。こちらは図書館で借りました。三浦しをんあさのあつこ近藤史恵という3人の女流作家がそれぞれニューヨークシティマラソン東京マラソン、パリマラソンを題材に描きます。もともとアシックスがウェブサイトで実施したキャンペーンの一環で公開された書き下ろし作品を、まず同社が私家版として書籍化し限定配布、さらに文藝春秋が商品化したもののようです。

この中ではパリ編の近藤史恵作品が一番よかったな。親とのちょっとした確執があって短期留学に来た主人公の若い女性が滞在先のパリで走る楽しさを発見し、現地での出会いがきっかけでパリマラソンに出場するという自然な流れ。初マラソンがパリ、しかも「4時間半ぐらいでゴールできるだろう」という余裕っぷりはちょっと気に入らないけど(笑)。パリで走るのは楽しそう。

ニューヨーク編の三浦しをん作品は、主人公が勤め先の社長の無茶ぶりで突然ニューヨークシティマラソンに出場させられるという話。いい話ですが、設定にリアリティを感じなかったので、心をむなしくして読み飛ばしてしまいました。

東京編あさのあつこ作品が一番納得いかなかったかな。主要登場人物の一人が若くして交通事故で非業の死を遂げ、それが主人公の競技生活に影を落とす。作中であろうとそんな簡単に人を死なせるなよ、と思ってしまいます。また、主人公が上司から仕事が中途半端だと喝破されて動揺する場面があります。その前にも後にも主人公の仕事ぶりについて読者が判断する材料は具体的に示されないので、説得力がありません。さらにもう一つ、この作品では主人公が東京マラソンを走るのではなく、出場を決めたかつての陸上部仲間のシューズの設計をするという展開ですが、高校時代の陸上部での主人公と仲間の描写において、レギュラーと控えという表現が出てきます。駅伝チームでもないのに「控え」とかそういう序列はないでしょう。そこもリアリティを欠きます。気になることが多すぎて楽しめませんでした。