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映画BLUE GIANTにボロ泣き

先週末に全国で封切られた劇場アニメBLUE GIANTTwitter上で評判がよくて、ぜひ見に行きたいと思っていました。それが、外出する用事があって意外に早く実現しました。

火曜日の午前8寺30分の回、吉祥寺オデヲンにて。観客は僕を含めて5人ぐらいでしたが、ファン感謝デーでもない平日の朝一番ならこんなものでしょう。

原作のマンガは以前たしか第1巻だけ読んでいて、ストーリーに関しては事前情報ほぼゼロの状態で臨みました。上原ひろみが音楽を担当したのは知っていましたが。以下、ネタバレがいやな方はここで読むのをやめることをおすすめします。

主人公、宮本大が雪の中を河原でテナーサックスの練習をするシーンから始まり、仙台から夜行バスで東京に出て、大学生になっている高校の同級生玉田俊二の部屋に転がり込みます。もうそのシチュエーションだけで遠い青春時代がよみがえってきて、狭い部屋で他人どうし生活するのきついんだよなーとか雑念が次々に頭に浮かんできます。

主要登場人物は主人公を含めて3人いて、この3人がジャズのバンドを結成するのですが、最初この玉田くんもジャズ仲間になるとは思っていなくて、サッカーのサークルを辞めてドラムを真剣に練習し始めたときは驚きました。主人公は世界一のジャズプレーヤーを目指していて、もう一人の沢辺雪祈もものすごく才能あるピアニスト、そこにド素人のドラマーが加わっても足を引っ張るだけなのは当然ですからね。

まあそこはフィクションなんですが、そういう設定から、感情移入して見る対象はどうしても玉田くんになります。実は僕が高校時代に参加したフュージョンバンドでも似た状況があって、急造ドラマーの博巨くんが最初どうなることかと思っていたら学園祭までにすごく叩けるようになっていたのを思い出しました。自分はいつまでもうまくならなかったなあ……。

そして、バンドがライブ経験を重ねていって成長してから、最初期から聴いているおじさんが玉田くんにかけた言葉「君の成長を聴きに来ているんだよ」のところで涙腺決壊。

終盤、日本のジャズクラブの最高峰SoBlueでの演奏シーンでは玉田くんがものすごいソロをとっていて(実は石若駿さんなので当然すごいわけですが)、その成長ぶりにまた涙。

そのシーンに限らず、本当に演奏の場面がものすごくよかった。成功の要因は、主人公の音を出す役に若手のトップクラスである馬場智章さんを起用したことだと思います。硬質でしかも暖かい音色、スピード感もある。主人公の人物造型は、目標に向かってまっすぐに突き進み、周囲への気遣いもできる好青年で、あとの2人と違って挫折らしい挫折もなく、あまり陰影がないんですよね。ドラマとしてはそれが弱点なんでしょうが、馬場さんの音を伴って現れるとき、逆にこういう人物だからこういう音が出せるんだという圧倒的な説得力を持ったように思いました。

ライブ演奏の映像はそれ以外と違って実際の演奏動画を加工したもののように見える場面が多くて、やや違和感がありましたが、それを補って余りあるサウンドの迫力があります。ぜひともいい音の劇場で鑑賞することをおすすめします。

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今書店に並んでいるBRUTUS 979号でも大きくフィーチャー